トランプ関税に端を発する応酬が、世界の分断と経済秩序の崩壊を引き起こしつつあります。関係者の努力でようやく輸出が拡がりだした日本産の農水産物も、このままでは深刻な打撃が免れません。
桜前線は連休を前に北海道まで届く様です。古文書の研究によれば、この500年で桜の満開日は20日早くなったとのこと。近代的気象観測が始まって150年、地球温暖化は漁業だけでなく桜の開花にも大きな影響を与えて居るようです。
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1.国際標準化関連
MOCA(GSSIの承認継続審査)は、IEによる審査およびベンチマーク委員会が大きな問題の指摘もなく終了し、理事会の決定を待っています。
アメリカCSCとの間で進めてきましたCoC認証における相互承認のMOU(覚書)を4月15日に締結しました。今後アメリカと日本の市場で双方の認証商品が追加審査なしでロゴを付けて流通することが可能になるよう関係機関との更なる協議や規程の改訂を行います。MELを含め両国のWeb site上にまもなく覚書の内容を公表します。関税問題が落ち着いたら、MEL認証の水産物がより広く、深くアメリカ市場に浸透することを期待しています。 -
2.認証発効関連
今月の認証発効は、CoCが1件です。
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3.認証取得者からのご報告
ライフコーポレーション様は昨年12月にCoC認証が発効し、4月から首都圏および近畿圏でMELのロゴマークを貼示した商品の販売を開始されました。状況につき、首都圏水産部チーフバイヤー井上様にレポートいただきました。
MEL認証取得の経緯
株式会社ライフコーポレーション
首都圏水産部 チーフバイヤー 井上 泰裕弊社は、「『志の高い信頼の経営』を通じて持続可能で豊かな社会の実現に貢献する」という経営理念に基づき、地域に密着したスーパーマーケット事業を展開しています。
近年国内の天然魚の漁獲量は減少傾向にあり、今後国内養殖魚の活用を増やしていきたいと考えています。そこで国内養殖業者の取得が多い「MEL認証」の取得・販売により、“生産者(養殖業者)支援”を実施するとともに、水産物の物量確保と安定供給を実現させ、“環境への負荷軽減”を目指し、持続可能で豊かな社会の実現に貢献し、日本の自然環境と魚の資源保護につなげたいと考えています。
この度「流通加工段階認証」を取得し、4月1日より首都圏・近畿圏の店舗(一部店舗除く)で、「MEL認証商品」を販売開始いたしました。お客様に「MEL認証商品」をお選びいただくことが、日本の水産業と魚食文化を守ることにつながります。ライフは「MEL認証商品」を販売することで、持続可能で豊かな社会の実現に貢献していきます。
ライフで「MEL認証商品」として販売している“伊勢黒潮まだい(養殖)”(一部お取り扱いのない店舗がございます)は、三重県海水養殖協議会・三重県漁業協同組合連合会・ライフの三社で共同開発した、ライフオリジナル商品です。2021年4月には生鮮食品区分の水産品「生魚」として国内で初めて“機能性表示食品”として受理されました。
良質な脂が乗っており、お刺身はもちろん熱を通してもさらに旨みがアップするため、塩焼・煮付にもおすすめです。「鮮度」「おいしさ」「安全・安心」にこだわった+「MEL認証商品」ライフオリジナル“伊勢黒潮まだい(養殖)”を、他社との差別化商品として引き続き販売強化していきます。
今後はPOPでの説明やMEL認証商品の販促も強化していき、ご来店していただけるお客様に、「MEL」とは何かをいかに分かりやすく伝えて、認知していただけるようにすることが、スーパーマーケット事業を展開する我々の使命だと考えています。井上様有難うございました。過日、岩崎社長、中島首都圏商品本部長、今井首都圏水産部長にお礼を兼ねて近況のご報告に参上しました。認証を生かすため「従業員の理解とお客様の関心を高める」という言葉をいただきました。早速SNSにて「ライフのお魚売場で「MEL認証」シールを探してみてくださいね♪」といった発信をしていただいき、感謝の気持ちでいっぱいです。MEL協議会がお手伝い出来る事がありましたら事務局までご連絡ください。
お店の様子について、下記報告書を関係者と共有しています。
2024/12/13に小売業でCoC認証を取得した株式会社ライフコーポレーション様が2025/4/1よりMEL認証ロゴマーク付き商品を店頭にて販売開始いたしました。4/8(火)に許可をいただきセントラルスクエア押上駅前店へ撮影に行ってまいりました。店内は広く明るく清潔感にあふれ全体的に青色のパッケージが多い中で補色である黄色い丸いMELマークは目立っており、MEL認証を知らない消費者の皆さまの為のわかりやすいPOPも目を引いておりました。
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4.関係者のコラム
今月は、日本の水産資源評価を担っていただいている水産研究・教育機構の中山一郎理事長に、研究機関のトップから見た水産エコラベル観の披瀝をお願いしました。
「水産物認証と安心」
国立研究開発法人 水産研究・教育委機構
理事長 中山一郎
「水産エコラベルは、生態系や資源の持続性に配慮した方法で漁獲・生産された水産物に対して、消費者が選択的に購入できるよう商品にラベルを表示するスキームのこと」と水産庁HPにある。さらに「水産エコラベル認証には、①生産段階認証(漁業/養殖別)、②流通加工段階認証の2種類がある」。「生産段階認証は持続可能で環境に配慮した漁業・養殖業から生産された水産物であること、流通加工段階認証は認証された水産物が、非認証水産物と混ざることなく、流通・加工・小売等の事業者により消費者のもとに確実に届くことをそれぞれ担保している」。これらを消費者自ら確認することは困難であり、権威と責任を持った機関が認証したものを、個々人は購買の選択基準として使えるわけである。これこそが認証の最も重要な存在価値である。
現実をみれば、欧米特に欧州では、「オーガニックまたはバイオ」コーナーとしてスーパーマーケット等で、持続可能な農業産品としてアピールされた農産物と同様、水産物も認証品が別コーナーに陳列されていることを多く見る。海外に行くと地元スーパーを回ってみるのが趣味である筆者が観察していると、どうも欧米でも消費者は二種類に大きく分類できるのでは、と思う(個人的な見解です)。迷わず認証コーナーに行って水産物を選ぶ人達、逆に通常のコーナーでさっと買い物を選ぶ人達。やはり日本と同様消費者の二極化は起きているように思う。
日本の場合でも認証品であるかどうかは、認知率は上がっているものの、まだ選択肢の決定的な大きなポイントとはなっていない気がする。結局は消費者の選択の大きなポイントは、いまだ「価格」であると考えられる。本来魚食民であった、日本人の消費量は、2011年には畜産物が水産物を上回ってしまっている。水産物は高いというイメージができてしまっている。一方で漁業者からは、「魚価の低迷」が大きな問題点として常にあげられる。これらのギャップがあっても、水産物を選んでもらえる、「健康に良い」という大きなアドバンテージを、環境に影響が少なく、持続的に、そしてフェアートレードでということを証明するのが認証であり、選んでもらう基準である。
しかし、究極を言えば、水産業はおしなべてそれらの条件は基本的に満たすべきものであり、そういった意味からいえば水産業は本来すべてが認証品でなくてはいけない。失礼を承知に言うと遠い未来には水産物すべては持続的な生産に基づく産業にすべきで、認証基準を満たしているのは当たり前、ということで制度はいらなくなるのが理想である。
とはいえ、現在消費者が安心して積極的に選ぶことができるための基準としての認証制度は必要であり極めて重要である。特に昨今の海洋環境変化・汚染や社会状況等を鑑みると、認証制度に大きく求められるものは、「持続性」「低負荷環境」「フェアートレード」そして、「アニマルウエルフェア」であろう。これらは意識ある消費者が食物を食べるときに最も気にするものであり、「安心」を担保するものである。食料は「安心」以上に「安全」があるが、こちらは食料としての基本であり科学的根拠で担保できるが、「安心」の確保に関しては、東日本大震災に伴う、放射能影響による風評被害をみても、人の気持ちに関わってくるとても難しい課題である。
認証によって、このような「安心」も担保できるようになれば、認証制度のひとつの大きな価値となろう。持続性、低環境負荷、フェアートレードの担保は「安心」の大きなキーである。また、近年海洋環境の変化によって、水産物の生息域だけでは無く、繁殖場所、季節の変化によって種の状況も代わってきている。フグや、ブリ類の雑種が天然海域で頻繁に現れるようになってきている。認証水産物の基本である「種」の同定、担保も今後検討材料となってくるのではないだろうか。
アニマルウエルフェアに関しても、米国のタコ養殖禁止法案に見られるような、食文化の異なる地域のルールでは無く、食料としての生物(いきもの)を、「いただきます」という日本の習慣は、たいせつなお命を頂き、自然に感謝している、という日本のフィロソフィーを伝える重要な観点である。ちなみに美食の国フランスのいただきますは、「ボンナペティ」で、直訳すれば「良い食欲を」であり、食べられる方のいきものを意識している日本とは根本的に異なる。
さらに水産物の生食、鮮度が重要な日本型水産物消費には、さしみに最適な鮮度を表すような基準も求められており、このようなものも将来認証に取り込んでいくことが必要になるのではと考える。MELジャパンには、このような日本型とはいえ、すでにUNESCOの無形文化遺産になり世界で通用する和食文化に即した独自のフィロソフィーを持って、日本発の水産物認証制度として、数多くある国際認証の中でのきらめきを持って欲しいと強く思っている。また同じような多種多様な魚介類を利用している、東南アジアから、MELを広げていくことによって、欧米に国際基準の数多くを抑えられている現状から、”未来につなげよう海と魚と魚食文化”や”多様性豊かな日本の海の恵みを世界へ”のMELの基本方針で、水産物認証に関しては日本、といった日本のMELから、世界のMELへの進化を大いに期待している。中山理事長有難うございました。広くかつ高い視点からの示唆を賜わり深謝申し上げます。現在MELの認証規格バージョンアップに於いて、中山理事長の視点も取り込んだ修正を行ない、パブコメを募集しているところです。
「日本発の、世界が認めるMEL」が確立出来る様頑張ります。引続きご指導をお願い申し上げます。
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5.理事会を開催しました
第39回理事会を3月24日に開催しました。決算、通常総会開催に向けての理事会であり、活動報告および収支決算見込み、令和7年度の事業計画および収支計画につき審議をいただき承認されました。
トピックスとして、MEL創立時に発生した借入金がようやく0になりましたこと、また現在パブコメ募集中の漁業認証Ver.3.0(社会的責任に関する項目を追加)については総会に諮れる様取り進めていることを報告しました。通常総会開催は6月24日(火)13:30~の予定です。
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6.マネージメントレビュー会議を開催しました
3月25日、マネージメントレビュー3者(スキームオーナー、認定機関、認証機関)による定例会議を開催しました。各機関より活動報告が行われましたが、特記事項として
- 認証機関の認定維持審査が滞りなく行われていること,
- 東南アジア諸国からMEL認証への関心が寄せられていることへの対応
- 認証規格改定に関する情報共有のあり方が問題提起されました。
特に今年は、MEL管理運営規則に定める5年に1回の規格見直し年でありますので、緊密な連絡の下事業を進めることが確認されました。
スキームオーナー(MEL協議会)、認証機関(日水資および海生研)のマネージメントは適正に行われていると判断されます。 -
7.水産学会春季大会のサイドイベントとして開催されました「水産増殖懇話会講演会」でMEL認証と餌問題が取り上げられました
3月26日、北里大学相模原キャンパスにおいて、「水産増殖懇話会(会長 近畿大学 澤田好史教授)」が主催する講演会のテーマに「MEL認証と餌問題」を取り上げていただきました。養殖が注目を浴びている背景を映し、会場に約200名が参加される盛会でした。
餌の問題を中心として、研究者、事業者(飼料事業者および養殖事業者)、消費者、行政夫々の立場からの発表と会場からの質問がかみ合い、課題と対応のあり方が顕在化しました。MEL協議会は勿論、審査機関である日水資も関与いただき、中身の濃いシンポジウムになりました。企画、運営いただきました澤田先生、北村様(日水資)ならびに登壇いただきました佐藤 秀一先生(福井県立大学)、立川 捨松様(黒瀬水産)、岡田 孝洋様(愛南漁協)、戸川 富喜様(ニチモウ)、山門 光孝様(林兼産業)、平野 祐子様(主婦連)、柿沼 忠秋様(水産庁)に心からお礼申し上げます。概要は日水資の北村様にまとめていただき、「水産界」5月号に掲載されます。 -
8.養殖認証専門部会を開催しました
認証機関である日水資より、認証取得者からの申請への対応としてMEL養殖認証規格Ver.2.1審査の手引き4.2.3に基づくモイストペレット使用に関する判断を求められ、専門部会を開催し審議いただきました。
結果、申請者から提出された試験報告書を精査した結果、現在特例として認めている製品の出荷前品質調整・品質向上のためのモイストペレット給餌1ヶ月を、給餌実態を考慮し実質給餌日数30日に変更することを容認することとしました。MEL協議会より日水資に回答すると共に、今後試験の継続をお願いし、養殖認証規格Ver.2.1への移行を事業者にダメージが発生しないよう推進したと考えています。
EXPO2025大阪関西万博が「いのち輝く未来社会にデザイン」のテーマの下開幕しました。開会式のTV報道では盛り上がりが伝わって来ました。
甘辛様々なコメントが寄せられる大イベントですが、新聞のコラムの掲載された55年前の大阪万博の岡本太郎氏による「太陽の塔」と丹下健三氏による「大屋根」にまつわる話に引込まれました。1964年の東京オリンピックと、それに続く1970年も大阪万博で大きく変わり行く日本の社会を現認した世代のひとりとして万感の思いです。
これから半年様々な想定外があるでしょうが、日本の魅力を世界に発信していただくことを願っています。
以上