MELニュース2025年2月 第83号

2025年2月 第83号

復権したトランプ大統領に世界が振り回された1ヶ月が過ぎました。
正に不確実性の乙巳年を実感しています。本当の不確実な事態が起きるのはこれから、心して脇を固めたいと思います。
立春寒波に続き今季最強・最長寒波に見舞われた各地からの大雪の被害の報に、晴天続きの東京で心を痛めております。水産業にとり、大雪は春の融雪水が海水と入り交じり、日本海の生態系の活性化をもたらし様々な魚種の豊漁を呼び起こすと言う巷説を思い返しております。正夢になることを願っています。

1.国際標準化関連

昨年12月に開始されたGSSIによる承認継続審査(MOCA)への対応として、MEL協議会の様々な活動に関連した議事録や報告書および認証機関による審査報告書や認証機関と認定機関関連の書類等の英訳を1月末に提出しました。
現在、3名のIE(独立専門家)が審査を行っています。ガバナンスと管理のAとBのセクションは4大陸で40年以上の経験があるオシレス・デ・メロ氏、養殖のCセクションはワクチン開発などで25年以上養殖業界で経験があるソフィー・フリードマン博士、漁業のDセクションはKey Traceability Ltd.という監査法人に勤めているチャーリー・ホースネル氏が担当しています。3名のIEは全員はじめてのMEL認証の審査担当であり正直どの様な指摘があるか読めません。事務局長(CEO)のエイビン・イーレ氏を含め日本の水産業に関する知見はないと思われますので、当面IEからの質問を待って対応することになります。関係の皆様には引き続きご協力をお願いします。

2.MEL認証発効関連

前号のMELニュースの配信以降、1月末に1件の養殖認証発効がありました。また、今月の認証発効はCoCが3件でした。
特記事項として、12月のライフコーポレーション様に続き、小売業で6例目となるイズミ様のCoC認証が発効しました。2019年から始まった取り組みですが、途中の紆余曲折を乗り越え現在の鮮魚部長友国義道様のリーダーシップの下この度の発効になりました。イズミ様は中四国、九州に店舗展開しておられますので、MEL認証の小売店が関西以西に一気の拡がったことをスキームオーナーとして大変嬉しく思っています。是非活用してください。

3.認証取得事業者からのご報告

今月は宿毛湾で生業的にマダイの養殖に取り組んでおられ、この度の認証証書授与式にも出席いただきましたヒロタカ水産の高木洋定代表にお話をお願いしました。

「海に感謝」

ヒロタカ水産 代表 髙木洋定

私は高知県宿毛市小筑紫町栄喜に生まれ、宿毛湾と共に育ってきました。幼少期から当たり前だった目の前の海、そして養殖業者の息子に生まれ当たり前のことのように見てきました。しかし、メル認証取得にあたり約一年間勉強している中で当たり前が当たり前ではなくなりました。海をお借りして養殖業をさせていただいていると言う事に気づかされ自分の未熟さを痛感しました。

MEL認証を取ろうと思ったきっかけは、MEL認証の事は前々から知っていたのですが出荷に対する競争負けなどから、ブランド化を進める中、決心しました。小規模事業者なので、全て一人で資料や現場の事を調査して大変でしたが、その分海に対する意識も変わり、改めてサスティナブルを知った気がしました。これからは、養殖業を通じてすくも湾に恩返しができるようにサスティナブルな養殖業を心がけて行きたいと思います。
まだ認証商流はございませんが、この考えにたどり着いただけでもMEL認証取得をしてよかったと思います。そうした中、メル認証を通じて認証業者様方とお知り合いになれる事を嬉しく思います。近年では、AIなどで効率化、人員削減とさわがれ、担い手不足も懸念され知性が独り歩きしているようで違和感を感じる中、知性と共に知覚もバランス良く確信に迫るべきだと考えます。
結びに、メル認証を通じて人と人が思いやり、皆が一枚岩になり、どんな流れが来ようと屈することなく日本の水産資源を益々盛り上げていけますように、真剣に向き合って行きたいと思います。

髙木様有難うございました。認証証書授与式会場でご挨拶をさせていただき、静かな情熱に共感しました。認証取得に当たってのご努力に敬意を表します。MELもお役に立てる様頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。

4.関係者のコラム

今月はJICAの国際協力専門員(水産)として、世界を股にかけ活躍しておられる、田村 實様(元MEL協議会技術部長)に最近訪問された諸国の水産業の状況につきレポートしていただきました。

「開発途上国から見た日本の水産業」

独立行政法人国際協力機構(JICA 国際協力専門員(水産)
田村 實

成田空港から飛行機を乗り継いで約20時間、西アフリカのコートジボワールに先日まで出張していました。その際現地の方々より、NPO法人「海のくに・日本」代表でMELアドバイザーボードの委員であられる白石ユリ子様達による「すり身教室」についてお聞きし、そのご活躍に大変刺激を受けました。ちなみに私の方は、コートジボワールの養殖振興に向けて、日本からの技術協力を行うための訪問でした。とても遠い西アフリカにおいて日本の水産技術が受け入れられているよう、海外の方々から見ると魅力的な技術が日本にはまだまだ沢山あるようです。

日本には、漁業や養殖の生産に加えて、持続的な資源管理に向けた高度な知恵や技術を有し、適切な取り組みをされている多くの事業者の方々がおられます。その代表は、MEL認証された事業者の方々といえるでしょう。今後MEL認証事業者の拡大とともに、我々日本人の間においても、持続可能な水産業の魅力がさらに広まっていくことが期待されます。MELの特徴は、日本の水産業の豊かな多様性が認証制度の仕組へと反映されていることです。
これにより、小規模漁業で多魚種を漁獲する日本の漁業の特性に合致したスキームになっています。私は2024年に、カリブ海や南太平洋、東南アジア、そしてアフリカの漁業を見てきましたが、それら全ての開発途上国に共通するのは小規模漁業で多魚種を漁獲していることです。無論、小規模漁業といってもその規模は国によって異なり、手漕ぎカヌーで手釣りをしている超零細漁業者、一日中素潜りで魚を銛で突いている南国の漁師、あるいは40馬力船外機を搭載した小型船に数百キロの魚を積んで港に戻って来る強者もいます。
このような開発途上国では、まず、漁獲の効率化などによる小規模漁業者の収入向上に焦点が当てられるため、自国の水産認証制度を確立できるレベルにはまだまだ至っていません。一方で、漁獲の効率化と同時に、持続的な資源管理にも取り組んでいくことの責任は常に問われます。このような状況の中、開発途上国に対する技術協力の内容を検討し組み立てていく上で、MELの認証基準はとても参考になります。例えば、管理体制はどうなっているのか、対象資源はどのように利用されているのか、生態系保全はなされているのかなど。その上で、日本の優れた技術の導入による水産業の振興へ、日本が培ってきた持続的な資源管理を組み合わせることで、バランスの取れた取り組みを進めていくことが求められます。
話は西アフリカからあちらこちらへ飛びましたが、改めて強調したいのは、日本の水産業は特に開発途上国から見てとても魅力的であるということです。これは、単に漁業や養殖の生産技術が高いということだけではなく、持続的な資源管理も含めて高く評価されています。今後とも、このような取り組みを実践されている事業者の方々がMEL認証を取得されることは、日本国内での評価を高めることにも繋がっていくことでしょう。そして、白石様達に続き、日本の水産業のさらなる魅力をより広い世界へと発信していこうじゃありませんか。

田村様有難うございます。編集子も昨年1月と7月の2回、JICAからの要請で「アフリカ中西部ギニア湾諸国の水産増養殖に関する本邦研修」の講師を務めており、盛り上がった雰囲気を思い出しました。ギニア湾諸国は1960年代に日本漁船が沖合の漁場を開拓し、その時の原地販売した魚(主としてアジ・サバ等青物)が現在の魚食のルーツとなっていることを考えると、縁を深くする根っ子が潜在している様に思います。水産技術を通し、日本に好印象を持つ国が増えることを期待しています。

5.MEL審査員研修(CPD研修)を行いました

2月13-14日MEL審査員研修を実施しました。今回はCPD研修であり、受講者の負担軽減のためオンライン形式で行い、10名の審査員資格をお持ちの方々に参加いただきました。水産エコラベルを取り巻く環境は激変しており、対応して認証規格も適時改正を行っていますので、現場で審査いただく審査員の皆様にとり最新の情報を持っていただくことは不可欠であります。
特に今年はGSSIがスキームオーナーに要求している「5年に1回の規格の見直し」を行っており、審査員研修にとっても重要な年になります。

シーフードショー大阪に出展しました

2月19-20日大阪ATCホールで開催されました第22回シーフードショー大阪に出展しました。晴天にもかかわらず時折小雪が舞う中、1万人を超える来場者の熱気がこもったショーとなりました。展示では12年ぶりに出展されたOUGホールディングス様がグループ(いずれもMEL認証を取得)を上げて集客をされたこと、また初出展の共同船舶様が大々的に最新の鯨メニューを試食提供され、今までとは異なった雰囲気で賑わいました。
今年も水産エコラベルコーナーが設けられ、特にMEL認証水産物展示では現物を訴えるだけでなく、認証取得者の情報をお伝えする棚を設けロスの排除とコスト削減を意識しました

展示商品は22社から43品で、ブースに立ち寄られた小売、飲食のバイヤーの皆様から関心を集めました。
シーフードショー初日に日水資様、海生研様共催のMEL認証証書授与式が行われ、7社の皆様に参加いただきました。皆様をMEL認証の輪にお招きできたことを大変嬉しく思います。ご一緒に頑張りたいと願っています。

今年もあっという間に2月が終わろうとしています。シーフードショー大阪でも多くの小学生の見学会が実施され、小学生のSDGsに関する日頃の授業の充実を感じました。MELも今週27日に松戸市立馬橋小学校で特別授業を行います。いつものことながら小学生の盛り上がりが、俗に言われる「噴水効果」として両親の「MEL認証水産物」ヘの関心を動かすことを期待しています。
三寒四温、温度変化が激しい季節皆様のご健勝をお祈りします。

以上