2024年1月 第70号
皆様明けましておめでとうございます。
失われた30年から「日本復活への攻め」を期してスタートした甲辰年も、元旦からガーンと一発を喰らい、前のめりがちであった心が引き締りました。
能登半島地震から日がたつにつれ現実となる悲惨な状況に言葉もありません。ただただ、亡くなられた方々のご冥福と、被災された皆様の平常が一日も早く戻ることをお祈りします。北陸4県のMEL認証取得者は、輪島漁業生産組合様、新湊漁業協同組合様、石川中央魚市様、山津水産様の2社2団体です。皆様BCP(事業継続計画)をお持ちと伺っておりますが、1日も早く通常業務に戻られることを願っております。
1.国際標準化関連
今年の課題は、MEL協議会の規格・認証スキーム管理運営規則に定める「5年に1回以上のレビュー実施」に従って行う認証規格の見直し(レビュー)です。これまで必要に応じ規格改正は行って来ましたが、今月来月と規格委員会を開催し漁業、養殖、CoC規格全体の点検を行います。ポイントとしては、現行規格の国際標準に合わせた修正および現行規格では希薄となっている部分(人権問題、地球環境への取組み、日本特有の流通加工事情への適応等)への対応です。
流れとしては、規格委員会で改正素案を作成、関係者の意見聴取および修正、パブリックコメント募集、規格委員会で新規格に纏め、理事会の決議を経て総会で承認いただくことになります。 GSSIの承認に関しては、従来のMOCA(承認継続審査、18か月後)から簡易的なサーベランス審査を毎年行う方針を打診されています。時期、内容等の詳細は、4月に開催予定のスキームオーナー会議で公開されると考えています。
2.認証発効関連
今月の認証発効は、漁業1件、養殖2件,CoC4件の計7件の予定です。
特記事項としては、豊洲市場のマグロ仲卸の(株)樋長様が認証されました。
豊洲の仲卸で3社目の認証取得です。早速、東卸組合が主催された豊洲市場の「夢市」で気仙沼の臼福本店様のMEL認証付き大西洋クロマグロを、樋長様が加工「MELロゴ付き柵」として販売されました。
3.認証取得者からのご報告
新年に当り、愛媛県でマダイの養殖を行っておられ、常々MEL認証制度に貴重なご意見を賜わっております(株)タイチ様にお願いし率直な現状を報告いただきました。
「生産者認証として制度に望むこと」
(株)タイチ 専務取締役 徳弘 清子
コロナ禍に突入した2020年の夏、SDGsの世界的流れがもっと加速するという動向を信じてMEL取得に舵を切りました。そして、2021年6月にMEL認証を取得することができました。取得から2年経ったわけですが、V2の規格で果たして今の「美味しい」が維持できるのかというところが一番の懸念となっています。
とはいえ、離脱してしまうと再取得するための時間とエネルギーが続くのかとも思い、自問自答しています。
MEL認証取得の少し前、2021年3月からは毎月第1土曜日の午後から、海のゴミ拾い活動を社員全員でしています。今では、近くの企業経営者や学生達が参加してくれるようになっていて、宇和島市役所も協力して下さっています。活動の一部をエントリーしたところ、この度、【環境省の『ESD実践動画100選』】に選ばれ、環境省のYouTube動画にも載せてもらうことができました。(https://www.youtube.com/watch?v=hezWCGqzfLE)
そして、このところ営業をしていて感じることは、今までとは違い、少しずつMEL認証や認証制度を気にしている客先が現れてきているということです。認証だけで選ばれているとは言えませんが、認証も選ばれる項目の一つになっていると感じています。そこで、今回はV2に移行する前に認証の更新だけはいたしました。今後はどのように継続できるかを模索してみようと考えております。なぜなら、SDGsが義務教育の必須科目となり、弊社にも子供たちへの講演や見学依頼が増えていることに驚いているからです。この子たちが今後10年もすれば社会に出てきて、消費者になり景気を動かしていくと考えると、SDGsに資する取り組みをしていかないと、選ばれなくなる。結果、事業が成り立たなくなると実感しているからです。
何事も継続することが一番難しいですね。もう少し頑張ってみます。
徳弘専務お忙しい中誠に有り難うございました。貴社の社長からもご意見をいただきました。また先月号に掲載の愛南町の海業推進室長 浜辺 隆博様からも指摘があり、MELの今年の規格のレビューの中で皆様と意見交換させていただくつもりです。水産エコラベルが社会のお役に立てる様頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
4.関係者のコラム
MEL協議会(新MEL)の事実上の産みの親であり、昨年の大日本水産会通常総会で永年お務めいただいた会長を退任された白須敏朗様に、日本における水産エコラベルの産・官・社会への浸透を振り返っていただきました。
「MELの更なる発展に期待」
(一社)大日本水産会
相談役 白須敏朗
私が大日本水産会の会長を辞してから早や半年が過ぎ、新しい年となりました。その間にも、MELまたはMEL協議会は弛まなく前進、改良進歩を続けていることを良く承知しており、心強く思っています。
最近のトピックスについて申し上げますと、一つはご案内の通り昨年9月にGSSIのベンチマーク・ツールの改定に応じた規格の見直しによる更新審査を終え、引き続きの承認を得たことであり、二つには、かねてから標榜していた飼料、魚粉・魚油の製造流通に関わる規格の開発が進み、昨年末に基本案が整ったこと、三つには設立当初よりの念願であった認証機関の複数化がやはり昨年の12月に成ったことです。
一つ目のGSSIの承認は、アラスカのRFMに次ぐ2番目とのことで、MSCやASCなどの先行有名スキームに先駆けてのことにて、様々な状況によるものと推察するものの、MELの皆さんの努力の賜物であり、当初の承認が9番目だったことに比べれば隔世の感があります。
私が会長時代から取り組んでいる国際水産団体連合(ICFA)においてもこのMELの創設からその活動の進展を毎回報告しており、昨年10月のローマにおける総会でもアジアを代表する副会長としてこのことが報告できました。その際、MELは小規模多魚種のアジアに相応しい水産エコラベルであるとの説明をしたところ、台湾の代表団を中心に、同感同調との反響がありました。
二つ目の養殖用飼料関係についての新規格の開発に関しましては、準備にかなり時間がかかり、ご苦労も多かったものと推察しますが、各方面のご協力も仰ぎ、基本案ができ、規格委員会を開催したことは、しっかり手順を踏んで進められた証拠でもあり、着実に前進しているものと思います。
三つ目の(公財)海洋生物環境研究所(海生研)がMELの養殖とCoCの認証機関として、(公財)日本適合性認定機構(JAB)の認定を受けた訳ですが、海生研が認定申請を行った後にMELの養殖規格のバージョンアップがなされたことから、JABによる審 査の一部にやり直しが必要となったこと等により、海生研が議会の呼びかけに呼応してから3年と当初の想定より長引いてしまいました。それぞれの皆様には小職よりもねぎらいとお喜びを申し上げるところです。
これらはいずれも垣添会長の志とリーダーシップ、そしてMEL協議会および関係の方々の弛まないご努力によるものと改めて敬意を表する次第です。
さて、大日本水産会としては枝元会長が新年度に向けて、資源管理を進めながらの漁船漁業の構造改革や輸出を含めた需要拡大ほかこれまでの路線を引き継ぐとした一方で、スマート水産業、脱炭素、労働環境改善、女性や若い人の活用、ひいては若者に選ばれる水産業等をキーワードとして挙げています。これらは全てMELをはじめとする水産エコラベルの目的や要件に関わる事柄であり、業界はもちろん、一般国民に対しても、早晩あたりまえのこと、所与の考え方になって行くものと思われます。
となればこれと同様に、一昨年前くらいからイトーヨーカ堂で取り扱われるようになり、私の実家の近くの生協でも販売されているMELマーク付きの水産物、商品ですが、また新たな大型スーパーも認証取得見込みとのことです。
この先どこかの時点で普及が加速し、どこの店舗でも見かけられるようになるのも大いに期待できることではないと考えられます。
大日本水産会が引き続きMELを支援し、MELが更に改良改善を重ね、社会の公器となる時代が早々に訪れることを期待しています。
末筆ながら、この度の能登半島地震では多くの水産関係の皆様も被災され、漁船、漁港設備も損壊しました。私が職を賭して復興支援に取り組んだ東日本大震災をまざまざと思い起こさせます。この誌面をお借りしてお見舞いを申し上げますと共に、一日も早い復旧復興をお祈りいたします。
白須相談役有難うございます。一同、期待を裏切らない様頑張りますので、
引き続きご指導ご支援をよろしくお願いします。
5.イベント関連
農水省の北別館1階の「消費者の部屋」で開催されました「さかなの日」のイベント(1月15日~19日)に出展しました。農水省に勤務される方をはじめ、来省者、学生の社会見学等昼を中心に好評でした。イベントへの参加者は水産庁、全漁連、魚食普及推進センター及びMELでした。
21日に池袋西口公園において開催された全漁連様主催のFish-1グランプリに出展しました。日比谷公園が改修工事中のため、会場を変更しての開催となりましたが、水産庁「さかなの日」のブースの一角でMEL関連展示およびお子様を対象としたMEL説明会を行い、あいにくの雨模様にもかかわらず大盛況でした。
6.会員の動向のご報告
昨年12月に味の素様が入会いただました。食品産業からの会員に味の素様、キッコーマン様、キユーピー様が揃い、「日本発、世界が認めるMEL」の国内の支持基盤が一段と拡がりつつあります。皆様にご支援をいただきながら内外の認知度を高め、より社会のお役に立てるMELを目指しますのでどうかよろしくお願いします。
1月8日「成人の日」の朝刊に、農林水産省から成人式を迎えた若者に「食」の重要さを訴える「食から日本を考える」NIPPON FOOD SHIFTの全面3ページの迫力ある意見広告が掲載されました。
(https://nippon-food-shift.maff.go.jp/assets/pdf/nfs_nikkeikiji2212.pdf)
仕掛けないと動かない時代、農水省様の前向きな行動に敬意を表します。
「戦略の転換点」になるのではと言われる今年は、新年からメディアを通しモノを訴えるのではなくコトを訴える広告が目立ちます。MELの活動はコトを訴える時代にマッチしており、皆様のお役に立てる様事務局一同心を新たに頑張りますのでどうかよろしくお願いします。併せてホームページも一新しましたのでご覧いただければ幸いです。
以上