MELニュース2023年7月 第64号

2023年7月 第64号

(一社)マリン・エコラベル・エコラベル・ジャパン協議会
事 務 局

エルニーニョが暑い夏を連れてきました。各地の夏祭りのシーズンは、また魚食文化とも深い縁で繋がっています。今年の半夏生は7月2日、鱧祭りの別称のある祇園祭は7月17日、土用の丑の日は7月30日と続きます。
7月3日に鹿児島県鹿屋市の意見広告が全国紙に掲載されました。曰く、「丑の日はウナギの日ではなく、牛の日であったって良いのではないか?」。全国有数の畜産市である鹿屋市は、カンパチ、ブリの養殖も盛んで鹿屋市漁協様がMEL認証を取得されていますが、それをもってしてもこの広告、伝統を継承するだけでなく多様性に如何に対応するか?を投げかけられた気がします。
暑い日が続く中暑い話で恐縮です。時には芋焼酎のロックと旬のカンパチの刺身は如何でしょう。

1.  国際標準化関連

GSSIの新基準へのMELの申請に関しベンチマーク委員会の審査が終わり、6月26日から7月26日まで30日間のパブリックコメント募集を行っています。いただいたコメントへの対応の後、理事会に諮られ問題がなければ承認に進みます。申請は昨年8月でしたから間もなく1年です。
なお、先行組のCSC(アラスカ)RFMのGSSIの承認が新基準第1号として6月30日に公開されました。現在、ASCがパブリックコメント募集中であり、MELが続いています。

2. 認証発効関連

今月の認証発効は漁業認証1件、CoC認証1件の合計2件でした。
特記事項としては、一般社団法人海外まき網漁業協会様が、カツオとキハダマグロを対象としたWCPFC海域における大中型まき網漁業について、漁業認証を取得されました。団体の規模が大きいため、ピアレビューやその他の審査手続きに一定の時間を要したようですが、2022年9月の申請受付から1年を待たずに認証発効となりました。協会事務局と所属会員の皆様のご努力に感謝いたします。
今回の認証取得により、先行してMEL取得した福一漁業様と合わせ、海外まき網漁業協会 様所属の26隻全てが認証対象となります。かつお節を始めとした日本の食文化を支える重要な漁業でありますので、MEL認証を活用いただくことを願っています。

3. 認証取得者からのご報告

日本の水産物輸出の柱として期待され、昨年11月にMEL養殖認証を取得された青森県漁連様のホタテ貝について、熊木専務理事にお話しをいただきました。

青森県「陸奥湾養殖ホタテ」MEL養殖認証取得

青森県漁連 専務理事 熊木 正徳

(1)自然が創り上げた好漁場「陸奥湾」

青森県陸奥湾は、東に下北半島、西に津軽半島、南には八甲田山系の三方を囲まれ、湾口が狭く湾内が広いことにより比較的波の穏やかな海であります。
陸奥湾に、「世界遺産の白神山地」や「豪雪地帯の八甲田山系」から雪解け水が栄養豊かなミネラル水となり川から海へと注がれる、自然が創り上げた「ホタテ養殖」に最適な漁場となっています。

(2)生産と流通加工が両輪となり「青森県の基幹産業」へ

陸奥湾には古くからホタテが生息し、昭和33年の「自然貝の大量発生」を機にホタテ漁業が始まりました。
その後、昭和39年には「天然種苗の採取に成功」し、昭和45年から本格的な「ホタテ養殖漁業」がスタートすることとなりました。
また同年、JF青森漁連を主体とした「全面共販体制の確立」により、生産と流通加工が両輪となったことで「陸奥湾ホタテ養殖漁業」が飛躍的に発展を遂げ、昭和58年に初の取扱高100億円を達成しました。更に昭和62年には150億円を突破し、平成28年には史上最高の生産量11万トン、取扱高254億円を記録することができました。
その後も安定的した水揚を維持し、「100億円産業」として青森県の基幹産業を担うとともに、現在は「養殖ホタテ生産量日本一」を誇っております。

(3)青森ホタテの概要

陸奥湾には10漁協、900経営体のホタテ養殖漁業者がおり、「天然種苗、無給餌」による「垂下式養殖」が行われております。
年間生産量は73,000トン前後であり、このうち採苗から1年で生産される「半成貝」が 75%を占め、JF青森漁連の指定買受人へ入札販売されております。仕向けは生鮮が2 %、加工品が98%であり、この加工品の88%はボイル品で通称「ベビーホタテ」として量販店、業務筋へ販売されております。

(4)MEL取得の経緯

「持続可能な社会づくり」は社会的な要請であり、量販店・大手スーパーからも環境認証の要望が出てきたところでありました。
もともと、ホタテガイ垂下式養殖は、「天然種苗、無給餌」という環境にやさしい養殖方法であり、地域に根付いた漁場管理と同じ養殖方法で行っていることから、JF青森漁連が窓口となり、養殖認証としては前例のない規模となる「地域団体認証」の取得となりました。

(5)MEL活用による「味の王様 青森ほたて」更なる販売強化

今回取得した養殖認証は、流通認証があって初めて効果が発揮されるものであります。従って、認証取得を手掛けた際に加工業者への協力を求め、現在JF青森漁連をはじめ10を超える指 定業者が「流通認証」を取得しております。
コロナ感染症が5類に移行したことで、国内での観光、イベント等が活発化され、また、国の水産業の成長産業化対策により「ほたて貝」が輸出の重要品目に指定されたことで更なる需要拡大が見込まれております。
今回の認証取得により「生産から加工・流通まで、環境に配慮した供給ルート」が完成できたので、国内外を問わず「味の王様青森ほたて」の更なる販売強化に活用していきたいと考えております。

 

熊木専務有り難うございました。今年の1月6日、雪が降りしきる青森市で開催されました ホタテガイ関連の製販の皆様の新年会で、MEL認証証書授与式を行い皆様と広く交流させていただきました。「山本護太郎賞」に象徴される皆様の陸奥湾のホタテにかける拘りと誇りに感銘したことを昨日の様に憶えています。今年は稚貝が少なく減産と承っておりますが、恵まれた自然と共生する陸奥湾のホタテガイ養殖の皆様のご健闘をお祈りします。

4. 関係者のコラム

MEL認証のロゴ付商品が加工食品に拡がる気配です。MEL協議会会員であります日本冷凍食品協会専務理事の木村均様に冷凍食品業界のMEL認証への期待を伺いました。

「冷凍食品と水産物」

一般社団法人 日本冷凍食品協会
専務理事 木村 均

<日本冷凍食品協会の紹介>

一般社団法人日本冷凍食品協会は、1969年(昭和44年)に社団法人日本冷凍食品協会として設立されましたが、それ以前にあった社冷凍魚協会と社冷凍食品普及協会が母体になっています。また、設立メンバーは、大手水産6社、全漁連、食品関係5社、大手電機メーカー7社及び日本冷凍空調工業会の20企業・団体で構成されていました。このように、協会設立は水産系企業が中心となっていましたが、これは水産物が食品の冷凍において先行していたことに加え、冷凍食品の将来性について水産系企業が早い段階で注目していたためと思われます。
当協会では、1970年に「冷凍食品自主検査制度」を発足させ、品質・衛生管理に係る冷凍食品製造工場の認定制度がスタートしました。これは食品業界において民間による認証制度として最も早く設定されたもので、この認定工場で製造された製品には、その証となる認定マークを貼付することができる制度です。その後、有効期間の更新制の導入、HACCP 対応など、内容を高度化しながら現在に至っています。
さらに1971年には製造、輸送、貯蔵、配送、小売等の業界代表を加えた委員会での検討を基に「冷凍食品自主的取扱基準」を制定しました。これにより、製造から小売に至るコールドチェーンにおける管理温度が-18℃以下に設定されました。なお、食品衛生法に基づく成分規格では、-15℃以下に保存することになっていますが、これは微生物が増殖できない温度で安全面を考慮しています。一方、この取扱基準の-18℃以下は、安全面に加えて品質を長期間にわたって保つための温度となっています。

<冷凍食品とは>

さまざまな食品の品質について、とれたて・つくりたての状態のまま長い間保存するため、冷凍食品は、前述の成分規格とともに、次の4つの条件を満たすようにつくられています。
①前処理している
②急速凍結している
③適切に包装している
④品温を-18℃以下で保存している
このため、小売店などで販売している未包装の凍結魚介類や冷凍食品としての表示がないもの(単に凍結した食品など)のほか、家庭でホームフリージングしたものは冷凍食品に該当しません。

<水産物冷凍食品の動向>

冷凍食品における水産物関係の品目としては、「水産物」(魚類、えび、いか・たこ、貝類ほか)、「水産フライ」(えび、牡蠣ほか)があります。そのほか、各種調理冷凍食品(炒飯、ピラフ、シュウマイなど)にも多くの水産物が原材料として利用されていますが、把握できないため上記2品目で動向を見ます。
「水産物」、「水産フライ」ともに、1980年には冷凍食品全生産量のそれぞれ1割弱を占めていましたが、全生産量が大幅に増加する中で、両品目の生産量は減少傾向で推移し、2022年には、それぞれ3%弱、2%弱になっています。
この要因としては、食生活が多様化する中で、冷凍食品の需要も多様化が進んだことや、水産フライ原料の多くは輸入品に依存していますが、安価で安定的に調達することができなくなったことなどが要因とみられます。
今後、単身世帯の増加、高齢化の進展、女性の社会進出といった社会環境変化が冷凍食品全体の需要拡大をさらに後押しするとみられますが、一方で、あらゆる原材料の調達についてSDGsに合致したものが求められていくと思われます。現時点で、水産物関係の冷凍食品では、MELのような認証を受けた原材料の利用は少ないとみられますが、今後、原材料に対する社会的要請への対応にとどまらず、認証された原材料を利用することで付加価値を高めることに繋がるのではないかと思われます。

表  水産物冷凍食品の動向

木村専務有り難うございました。時代の要請を取り込みながら成長してきた冷凍食品ですが、今新たにSDGsヘの貢献という大きな動きに対応される中、MELの活動が冷凍食品の更なる発展のお役に立てることを願っています。

5. 審査員研修(CPD)関連

本年度1回目のMEL審査員研修を7月26、27日に行います。CPDですので、既に審査員資格をお持ちの皆様のブラッシュアップ研修です。水産エコラベル新時代、GSSIの新基準での承認等MELにとり、また審査員の皆様にとり重要なタイミングでの開催であったため受講者は申し込みベースで21名となりました。猛暑の中にもかかわらず、皆様の真剣な取組みが伺えます。

6. イベント関連

7月7日に主婦連様が「漁業の今と未来を考える-SDGsと水産物」をテーマに講演会を開催され、横浜国立大学名誉教授・学長特任補佐の松田裕之先生とMEL垣添が講師として招かれました。MELのアドバイザリーボードメンバーである平野祐子社会部部長のリードの下、河村会長、有田環境部部長(前会長)も出席され主婦連会館の会場およびオンライン参加とも盛況で、質問も多く関心の高まりを感じました。

7月17日には「海の日プロジェクト2023in汐留」(国土交通省海事局主催)が4年ぶりに開催されました。暑い中、多くのファミリーが来場し盛況でした。第3期アンバサダーの皆さんも来場され、とても良いレポートを投稿してくださいました。MELのSNSフォロワー数もさらに増え、今後も子ども達に関心を持ってもらえるような様々なアプローチを考えております。

https://www.instagram.com/ririkankan/

7. MELワークショップを開催します

8月23日に「第25回ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」の会場に於いてMELワークショップ開催を準備中です。
今年3月に交代したGSSIの新事務局長Lisa Goché氏が来日しますので、この機会を捉え「水産エコラベル新時代」、「GSSIグローバル・ベンチマーク・ツールVer.2.0」の承認等日本とMELが対応すべき課題について議論したいと考えています。
また、GSSIのGoché事務局長には日本の水産業の状況をより深く理解いただくため、関係先の訪問を計画しています。「日本発の世界が認めるMEL」の存在感をより確かにするためにも、新基準でGSSIに承認されるタイミングとなればパブリシティ効果としても最高です。
ご案内は詳細を詰めた上、来月初めから行います。

海の日を含む7月の3連休は猛暑が日本を包みました。メディアは水難事故防止と熱中症対策に大童でしたが、各地で発生した梅雨の末期の線上降水帯による豪雨は対策の難しさを私たちに語りかけています。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
前回2018年のエルニーニョは記録的猛暑と高温による農水産物への被害が深刻でしたが、 また台風の被害にも苦しめられました。引き続き気を抜かず対策の手を準備しましょう。

以上