皆様、明けましておめでとうございます。MELも再スタートから6回目の新年を迎えました。本年もどうかよろしくお願い申上げます。
第6波が驚異的なスピードで拡がる中、株高円安で始まった新年は広い範囲の製品・サービスの値上げが待つ波乱の年の様相を呈しつつあり、先行きは全く読めなくなっています。
皆様とご一緒に「持続は創造にあたる」(高野悦子:岩波ホール総支配人)の精神を持ち続け頑張りたいと思います。
1.国際標準化関連
GSSIの新バージョンへの申請準備は着実に進んでいます。何より、MELの諸規程が、2018年の承認申請時に較べ専門部会の委員の皆様のご支援で格段に整って来ていることは心強い限りです。
一方、GSSIは今回デジタルベースで申請、審査を行うソフトウェアを開発中ですが、導入が遅れ気味と伝わっております。2月にスキームオーナー全体会議が開催されますが、その進捗を確認できる見込みです。
2.認証関連
今月の認証件数は養殖1件、CoC1件計2件でした。ややさびしい数字ですが、認証直前が多数あり来月に実現を期待します。
3.認証取得者からのご報告
「愛南の真鯛」が拓く地域の未来<愛媛県愛南町>
愛南漁業協同組合 組合長
立花 弘樹
愛南漁業協同組合(愛媛県愛南町)は、2005年に愛南町の7つの漁協の合併により誕生しました。漁船漁業、魚類養殖業、貝類養殖業が事業の3本柱で、中でも魚類養殖では真鯛養殖生産量の全国シェア20%近くを占め国内トップクラスの養殖産地で、マダイでMEL養殖認証を取得しています。
昨年(2021)は、モスバーガー様とのお取組みによる「真鯛カツバーガー」の販売など、コロナ禍の中、地域が元気になる取組みができた一年でした。
MEL認証取得後、販売面では大手商社や外食チェーン、量販店などとの取組みを行ってきました。国内でもMEL認証の認知度が低く、なかなか直接的な販売には結びついていませんが、引き続きMEL認証をPRしながら、販売に取り組んで参りたいと考えております。
販売面以外でもMEL認証取得で変わったことがあります。これまでも各組合員が環境に配慮した持続可能な養殖業に取組んではいましたが、当組合が旗を振って推進することで、組合員、職員の意識が変わったように思います。現在、当組合では北米向けにも輸出を行っておりますが、海外でも信頼される魚づくりを目指し、抜き打ちでの残留薬品検査や水質調査(重金属)のポイント・回数増など、安心・安全のエビデンスを高める取組みを行っています。
加えて、本年(2022)は、生産段階の環境負荷を減らすため、廃フロート減容器の導入などにも取り組みます。
愛南町は、水産業が町の基幹産業です。当組合として、2021年にSDGs宣言を掲げましたが、言葉だけでなく、真に持続可能な産業にするため、本年も取り組んでまいります。
立花組合長有難うございました。立花組合長はじめ皆様の前向きな取組みに敬意を表します。MEL認証がもっともっと皆様のお役に立てる様様々な仕掛けをして行きますので、ご一緒に頑張りましょう。
4.関係者のコラム
海外の皆さんに日本のMELがどう写っているか、現在JICAの専門家としてフィジーに赴任中の元MEL技術部長でGSSI承認取得に貢献いただいた田村 實様に伺ってみました。
「水産認証がフィジーの人の目にどう写っているか」
独立行政法人国際協力機構 専門家(海洋資源管理)
南太平洋大学農業・地理・海洋・自然科学部 所属
田村 實
「突然ですが、朝食は何を食べましたか?魚を食べた方はいますか?」。フィジーにある南太平洋大学にて現地の学生達に、ごはん、のり、わかめの味噌汁、ひじき、さけの写ったスライドを見せつつ、「これは日本のごくありふれた朝ごはんです。朝から魚介を食べる国の水産業についてお話します。」と始めると、皆さんは話を聞く態勢に入ってくれます。
多くの海外の人びとの目には、日本の水産業はとても興味深く写るようです。多様な魚種、全国に広がる漁港や魚市場と魚料理店、地域的な漁具や漁法、高度な衛生管理、養殖や加工の最先端な技術など、様々な特徴が見られます。
また、歴史的、伝統的には、浮世絵に描かれた日本橋魚河岸が今日の豊洲市場に発展し、魚介を欠かすことのできない和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、人と自然が共生する里海が世界的に認知されるなど、改めて日本人と魚や海との深い繋がりに気付かされます。
ところで、フィジーの位置する中西部太平洋はマグロ類の一大漁場で、沖合マグロ漁業は主要な産業です。2017年の国連海洋会議においてフィジー政府は、フィジー漁業組合(Fiji Fishing Industry Association)に属するマグロ延縄船のうち少なくとも75%以上についてMSC 認証の取得を約束しており、今日では50%以上の船が認証を取得しています。そして、認証マグロは、欧米市場においてプレミアム価格で取引されている一方で、フィジー国内でお目にかかることはありません。また近年では、IUU漁業対策としても欧米の開発援助機関や国際NGOによる資金提供を通じて、MSC認証の取得が加速されています。さらには、現地の漁業者が、年次審査の費用などを賄うことはできないため、これも外部資金に依存しています。
無論、全世界的な資源管理という視点に立つと、このような取り組みは歓迎されることです。一方、フィジーの人びとは認証水産物を目にすることなく、行政や漁業者は欧米市場のプレミアム価格ために外部資金に頼るなど、認証システムを通じた資源管理において現地の人びとの主体性がすっぽり抜け落ちているように見えてなりません。
GSSI承認済みのMEL認証では、科学的、客観的な事実に基づき審査が行われ、その過程や結果の透明性確保が厳しく求められます。同時に、日本発のMELは、歴史や伝統ある地域に根付いた人びとと魚や海との係わりなど、数値化することのできないことも認めて世の中に発信できているのではないでしょうか。
フィジー水産省へMELを紹介すると、まずは、欧米以外にも水産認証スキームのあることに驚かれます。その上で、自国の資源管理を自国のスキームで審査できることは、とても共感が持てることであり、日本人はMELのことをもっと世界に向けて発信していくべきであるということです。MELの国際的かつ日本的な教訓が徐々にでも世界に広げられることで、各国に根付く数値化することのできない人びとと魚や海との関係も含めて評価されるきっかけとなり、より主体的な資源管理の取り組みへと繋がる国が増えていくかもしれません。そして、たくさんの認証水産物が食卓に乗る国の水産業についてお話できる日はそれ程遠くはないと期待しています。
田村様有難うございました。雰囲気がとても身近に感じられました。MELがこれ等の国々にも貢献出来る様引き続きご指導をよろしくお願いします。
5.講習会関連
富山市農業水産課の田中輝昭様のご尽力で、1月12日に大日本水産会と富山市漁業振興協議会の共催で、とやま市漁協の関係者の皆様を対象としたMEL講習会がリアルで開催されました。MELからは冠野事務局長と秋本課長が出張、地元からは漁業者、県関係者、漁協関係者20名が参加され、白エビとホタルイカのMEL認証取得について熱心に意見が交わされました。
冠野事務局長等は魚津漁協、新湊漁協、富山地方市場にもお邪魔しまして状況を伺ってきました。富山湾は駿河湾と並ぶ特異な生態系を持つ漁場であり、その資源を持続的に利用するためにMELがどの様にお役に立てるかについて、様々な角度から議論を深めていきたいと考えております。
今後ともよろしくお願いします。
6.販促関連
昨年6月に日本かつお・まぐろ漁協として漁業認証を取得された遠洋かつお一本釣り漁業のカツオを原料とした南食品(明豊漁業のマルチサイトでCoC認証を取得)のかつおたたきが、イトーヨーカドー様の全店の定番商品となり今週より発売されました。
イト―ヨーカドー様の持続可能計画として力が入っており、成果に結びつくことを願っております。
現在MELロゴ付で流通している商品数は91品になりました。
7.MELワークショップ開催について
第6波の拡大に歯止めがかからない中ではありますが、新MELスタートから5年の特別企画として、水産エコラベルが一層皆様のお役に立てるために、消費者・生活者の視点で議論するワークショップを開催することを準備しております。感染防止の観点から、会場にお越しいただくのは登壇者及び関係者に限り、皆様にはWebで参加いただく形式となります。
開催日時 2022年2月16日 13時~16時
ホームは三会堂ビル石垣ホールとしますが、Webで同時配信します。
登壇者 基調講演を前水産庁長官の山口 英彰様
ディスカッション「生活者の視点から、持続可能な日本の漁業、魚食文化をみつめる」をテーマに、関係者で議論をいただく。
認証商品のメニュー紹介や、試食を織り交ぜることを考えております。
Web参加者は事前登録とさせていただくことになります。
多くの皆様の参加をお待ちしております。
南太平洋のトンガで巨大噴火が発生し、環太平洋諸国に津波が押し寄せました。1960年5月に南米チリで発生した史上最大と言われる大地震が引き起したチリ津波を思い出しました。改めて自然の力に畏れの念を持つとともに、全国で水産関係に被害が出ていることに心を痛めております。
来月はMELにとりまして、ワークショップ2022の開催をはじめとして多くの行事を企画しており、GSSIの新基準への申請準備等々事務局一同忙しくしております。感染拡大に歯止めがかからない第6波の中ではありますが、負けない様しっかりと対応して参ります。
以上