MELニュース2021年 12月 第45号

様々な出来事が濃縮され現実化した丑年も余すところ1週間となりました。
MELにとりましては、新MELとして再スタートしてから産みの苦しみの5年を多くの皆様のご理解とご支援に支えられ、世界的にも、国内的にも一定の存在感を持つスキームに進化することが出来た年でした。
SDGsへの行動が日本中に拡がる中、新漁業法の下、次の水産基本計画において資源管理、輸出拡大が課題となり、MELへの期待も一段と高まっています。
先にお届けしました5周年のご報告でお約束しました通り、社会と事業者の皆様に貢献出来ることを目指し諸課題に真摯に取組みます。どうか宜しくお願い申し上げます。

1.国際標準化関連

MOCAの完了とともに息をつく暇なく、GSSIの新バージョン(Ver.2.0)へ
の承認申請が待っています。12月14日にGSSI事務局による新バージョン
申請のための説明会がオンラインで開催されました。GSSI事務局によれば
既に3社が申請準備中で、来年前半には新バージョンでの承認第1号が実現する様です。MELとしても、出来る限り早い時期に新バージョンへの移行を考えています。

2.認証関連

今月の認証は、漁業1件、養殖1件、CoC3件、計5件、累計160件で越年の見込みです。コロナ対応の制約もあり、またピアレビュー制度導入の関係もあり認証発効が遅れ申請者の皆様にはご迷惑をお掛けしておりますことをお詫び申し上げます。
認証がスムーズに進むためにも、また認証活用のためにも、コロナの次の波が来ないことを祈るばかりです。

3.認証取得者からのご報告

今月は、10月にCoC認証を取得され積極的に活用に挑戦しておられる横浜食品サービスの瀬戸 清社長に手応えをお話し頂きました。

「MELをテコに市場のニーズに応える」

株式会社 横浜食品サービス
代表取締役社長  瀬戸 清

昨今では気候変動を含め、世界中が大きく変化していく中で、持続可能な社会を実現するための取り組みが今後の会社運営に不可欠な内容と感じております。その為には、具体的に目に見える形で運用することを決め、行為に移すことが重要との認識から、SDGs の取り組みの一つとして今回の MEL 認証取得に至った経緯です。
弊社の特徴といたしまして、日々、お客様(消費者)と直接接点を持つ商品を、量販店を介して提供させて頂いております。また、外食店舗を運営していることから、まさしく、食材を通して、お客様と直接の会話が出来る環境にあります。
美味しい、鮮度が良い、そして、トレサビリティが語られるのが当たり前の時代。しかし、その背景には、多くの方々が、各々の商品を作る為にご尽力をされていることを知っています。だからこそ、多くのお客様(消費者)へ、「安全・安心」その思いを伝える為、「MELって何?」を知って頂き、「海と資源と魚食文化を守る」ことを、積極的に情報発信し、持続可能な社会実現への取り組みに参加する行為こそが重要と認識しております。
どうしても、魚であれば〇〇とメニューを決めがちですが、多様化する食生活においては、新たなメニュー提案が可能ではないかとの思いから、横浜市立大学 国際商学部 柴田ゼミの学生さんとコラボし、MELの情報発信、MEL商品を使用したメニュー開発・提案などの取り組みを進めております。情報を固定化することではなく、広く知っていただけるMEL情報としての発信を目指しています。
この度、外食店舗で初(国内初)のMEL認証を取得させて頂きました。是非、「横浜屋本舗食堂」にお立ち寄り頂き、MEL商品を味わっていただければと思います。

瀬戸社長有難うございました。過日「横濱屋本舗食堂」にお邪魔し、MEL認証ロゴがついたセットメニューを試食させて頂きましたが、スキームオーナーのトップとして感動の瞬間でした。来年 1 月にはメニュー開発等コラボ先の横浜市立大学柴田ゼミの学生さんとも交流させていただく予定です。

4.関係者のコラム

今月は、MEL認証の審査機関をお願いしております(公社)日本水産資源保護協会会長であり海洋、生物、生態に関する世界的権威の高橋 正征様に科学者の立場から認証制度についてお話しをいただきました。

「民意をどれだけ高められるかがMELの課題」

(公社)日本水産資源保護協会会長
東京大学・高知大学名誉教授 髙橋 正征

数年前に沖縄県南城市のサキタリ洞遺跡から 2 万 3 千年前の旧石器時代の釣り針が発見されました。今のところ世界最古です。つまり、人類はそれまでは魚を獲るのに道具らしいものは使っていなかったのです。現在は、釣りはもちろんのこと、網をはじめとして、魚を獲る道具は様々に工夫され、さらに船や魚探や漁礁など、魚を探したり集めたりする工夫も進んでいます。

特に、最近 100 年の進歩のすさまじさは尋常ではありません。今や、世界の海で魚たちは隠れ家や逃げ場を失ってしまったと言っても過言でない状態です。このまま放置すると、漁業資源の枯渇が懸念され、事実、いくつかの種ではそれが現実化してきました。この問題は単に水産資源だけでなく、地球上のすべての自然資源に起こっていることで、1992 年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた地球サミット(環境と開発に関する国際会議)で取り上げられ、その後、国や国連で検討が進みました。水産資源に関しては、持続的利用の促進のための責任ある漁業体制確立を目指し、国際連合食糧農業機関(FAO)が 2005 年に国際的なガイドラインを作り、それをもとに水産認証制度が生まれました。この制度は、漁業活動に対してある種の規制を課すことですが、同時に、漁業者への大きな教育効果ももっています。
水産認証制度と一口に言っても、歴史的背景などもあり漁業のやり方は国によって異なっていて、すべてを統一的に扱う難しさがあります。例えば、欧米では決まった魚種を狙った漁業が中心ですが、日本では定置網のように多様な魚種が入り、それも季節によって大きく異なります。持続的な漁業を目指すという目標は変わりませんが、審査に関する具体的な内容や方法は工夫が必要です。そこで、日本の漁業に適した制度としてMELが誕生したといういきさつがあります。
水産認証では制度の内容を決めて維持するスキームオーナーと制度の内容に沿って審査する審査機関が設けられ、前者には当初(一社)大日本水産会、2016年から(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会が、そして後者にはこれまで(公社)日本水産資源保護協会があたってきました。スキームオーナーと審査機関はそれぞれ公的機関によって審査を受けています。
MELは2019年12月に世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI)の認定を受け、国際的な要求事項に合致していることが認められ、以来、国際認証として通用するようになりました。
現在までのところ、MEL認証数は表に示した通りです。認証数は次第に増える傾向にあり、特に流通加工段階認証(CoC認証)では生活協同組合や大手の流通企業の認証取得が見られるようになりました。
大きな課題は認証に対する消費者の関心の低さです。欧米では、持続性の高い漁業活動への関心が高く、水産認証のついた魚介類を選ぶことが社会的にかなり広く見られます。その結果、消費者に選ばれるようにと、認証取得へのモチベーションが生まれます。しかし、日本では残念ながら消費者の多くは持続性を高める必要性は理解していても、購買力にはつながっていません。生産者や流通業者には認証取得とその維持のために費用負担がありますが、それを価格に転嫁すると売れなくなってしまう心配があって、認証のない魚介類と同程度の価格での販売を強いられています。無農薬農産物は購買者にとって健康に良さそうだという認識があり、値段が高くても購入されますが、認証をとった水産物は購買者にとって特にメリットを感じさせません。日本では寄付文化がなかなか育たないことと似ていて、この課題の克服は容易でありません。ただ、反面、日本ではいったん社会的理解が生まれると徹底するといった大きな特徴があります。是非、知恵を絞ってその実現に邁進したいものです。

髙橋先生有り難うございました。先生ご指摘の社会的理解醸成に認証事業者とともに真摯に取組んで参ります。

5.イベント関連

今月のイベントへの参加は、2日に大阪で開催された日本食糧新聞社主催のフードストア・ソリューション・フェアと同じく12日に大阪で開催されました大阪科学技術センター主催のクリスマス・スペシャルイベント「日本の水産業を応援しよう~知っているかな?水産エコラベル制度~」の2件でした。
関西圏への MEL の浸透を意識した参加ですが、それぞれ手応えを感じています。FSF では、開会式に出席された小売業のトップを含めブースへの立ち寄りも多く、用意しました配布資料は早々となくなりました。また、クリスマス・スペシャルイベントでは参加希望者が定員を大きく超え、嬉しい悲鳴でした。

6.SNS を活用した社会への働き掛けが動き出しています

MELの広報を担当しております小林由香里係長からの報告です。
「認知度向上の為のSNS活用のご報告」
7月にInstagramアカウントを開設してから5ヶ月ほど経ちました。MELアカウントのフォロワーは現在 350人程ですが、総「いいね」の数は12,000を越えようとしています。インフルエンサーをアンバサダーに迎え、共感を得て一般の皆様へMELのPRをしている為、推定閲覧者数は4か月ほどで3万人を超えていると考えています。

8月の最終週にアンバサダーを募り、応募者47名の中から普段の投稿とアンケートをもとにモニターと併せて17名の方にお願いしています。

  1.  MELのご紹介:アンバサダー就任後、9月24日に説明会を行いMELとMEL協議会の主旨などを紹介しました。
  2.  大丸有SDGs:大丸有SDGs ACT5での「サステーブル」イベント(10月4日)にご招待し、レポートして頂きました。
  3.  ジャパンインターナショナルシーフードショー:11月8,9,10日のいずれかに来場してもらい、MELの出展の様子をレポートして頂きました。
  4.  MEL認証の水産物の試食:田老町漁業協同組合様よりワカメ、有限会社山神水産様よりホタテ、東町漁業協同組合様よりブリを送付しご紹介して頂きました。
  5.  大阪科学技術館でのお話会の告知:12月12日に開催しました親子で参加のお話会の告知をして頂きました。
  6.  横濱屋本舗食堂:株式会社横浜食品サービス様が運営する横濱屋本舗食堂で、MEL認証商品メニューの試食をお願いしました。

今後もアンバサダーの協力を得て、より多くの方にMELを知ってもらうため様々なアプローチを重ねてまいりますので皆様もぜひフォロー&いいねをお願いいたします。
▽MELインスタグラムアカウント
https://www.instagram.com/meljapan/

今夜はクリスマスイブ。世界中でオミクロン株への厳戒態勢がとられる中、静に過ごす夜になるのでしょうか。
日本の水産界は、スルメイカに始まりサンマ、秋鮭の歴史的不漁が続く暗い年でしたが、WCPFCにおいてクロマグロ15%増枠が決定しいささか溜飲を下げたところです。一方、アラスカでは来年のベーリング海のタラバガニが禁漁になり、ズワイガニの枠も88%削減、スケソウダラの枠が20%削減と言うとんでもない数字が決定されています。マダラや銀ダラの枠は増えるものの、水産業界にはかり知れない影響を与えることになり頭の痛い問題を抱えることになりました。
すんなりと明るい寅年とは行かない様ですが、鋭気を養い来る年に備えて
下さい。今年もMELニュースにお付合いいただき誠に有難うございました。どうか良い年をお迎えください。

以上