2021年4月 第37号
日本中がコロナとの長い闘いに苦しみながら、更なる課題が待ち構える新年度に入りました。福島原発の処理水の海中放出を政府が決定し、2年後と言われるX-dayに向け準備が動き出します。福島は認証件数も多く、また漁業者の皆様にとって試験操業が終り「さあこれから、『常磐もの』復活!」というタイミングでのこの決定はあまりにも酷です。
今、人類が直面しているもう一つの緊急事態である気候変動からも目が離せません。政治、行政の問題だけでなく、足元への対応は当然として中長期的にどの様な備えをするかが一人一人に求められています。
MELニュースも、皆様のご支援をいただきながら4年目に入りました。今月から装いを新たにすると共に、新企画として「認証商品の販促の取り組み事例」のご紹介のコーナーを設けました。コロナ禍での事業者の皆様の懸命な努力が些かでも参考になれば幸です。
4月13日にGSSI事務局と審査員とのWeb会議を予定していましたが、先方の準備が整わず延期となってしまいました。現在まだ、GSSI審査員(IE)による書類審査の段階ですが、この段階がなかなかクリアできていません。様々な外圧もあり審査員を慎重にさせているのではないかと感じています。
当然ながら、審査員からの要求にMELとしては真摯に対応しており、そろそろ次のステップ(ベンチマーク委員会の決定を経てパブコメ募集へ)に進んでは如何?のために設定した会議でありましたが、まだ審査員からの指摘は続いています。
GSSI事務局とMEL事務局間で審査員(IE)から指摘を受けている点についての考え方に関するより突っ込んだ議論が喫緊の課題と受け止めています。結果、MOCAのプロセスは更に遅れることは避けられません。一方並行して進んでいるGSSIの新基準(Ver.2.0)導入における規格の厳格化との兼ね合いもあり、専門部会、アドバイザリーボード等の関係者のご指導の下、日々進化しながらより完成度の高いスキームにして行くことを標榜しているMELとして、大局的齟齬を起こさない様緊張感を持って取り組んでいます。
今月の認証は漁業2件、養殖1件、CoC3件計6件でした。
漁業において旧MELから移行された苫小牧漁協様のホッキガイの認証が発効しました。関係の皆様の努力に敬意を表します。貝類としては、昨年12月に発効しました十三漁協様のヤマトシジミに次いで2件目の認証です。また、愛知県しらす・いかなご船びき網連合会様のしらす機船船びき網漁業が認証
され、認証の裾野が広がりつつあることを嬉しく受け止めています。
先月号で累計認証数が100件を越えることをご報告しましたが、この機会にMEL発足以来の歩みを整理して見ました。国際標準の厳しいルールに沿って、MEL事務局と関係者が共に積み上げてきた真摯な努力が改めて浮かび上がりました。ルールを守る文化を大切にすることが間違いなく皆様が取得された認証への評価とロゴがついた商品の価値を高めることに繋がると受け止めています。
まとめました文書は皆様には別途お届けさせていただきます。
コロナで先送りとなっておりました鹿児島県の講習会が、 3月29日に「国際的に通用する水産エコラベルの活用に向けて」をタイトルに鹿児島県水産物等輸出促進協議会および大日本水産会の共催のもとオンライン方式で実施されました。
講習会開催は、2019年1月に続く2回目であり、漁業、養殖、加工、流通、行政からバランス良く出席いただき、講演終了後の質疑も活発で予定時間をオーバーする等皆さんの真剣さが伝わってきました。MELは皆様の思いを受けキチンと対応して参ります。開催にご盡力をいただきました輸出促進協議会の佐野会長はじめ県水産振興課の皆様にお礼を申し上げます。
マネージメントレビューの一環として2019年から定例的に開催しております3者会議を3月30日に実施しました。今回はMEL認証機関受託に取組中の海生研およびオブザーバーとして水産庁からも出席いただきました。
3つの課題があり、長時間の会議になりましたが
- 認証・認定業務はコロナの影響を大きく受けており、欧米を中心に「遠隔審査」への取り組みが喫緊の課題として議論されている。認証・認定業務は現地審査抜きには成立しない面がありますが、先ずは出来るところから始めるという観点でガイドライン作りから取り組みの検討をすることにしました。
- 同時に、審査報告書レビューに関して昨年から外部レビュー制度を導入していますが、内部レビュー(審査機関における判定会議の前のレビュー)の充実を図るためレビュアーの重層化を検討します。例えば、当該審査にタッチしていない審査員がレビュアーを務める等。
- 現在進行中のGSSIの基準改訂は(Ver.2.0)は7-9月に公開されると連絡を受けていますが、基準改定は、MELおよび認証取得者にとっても、審査機関である日水資にとっても、認定機関JABにとっても業務上の影響は極めて大きいと思われます。GSSIVer.2.0が公開された後、的確な対応のための3者会議を開催することとしました。
MELにとってMOCAの終了が大幅に遅れており、またGSSI側の対応能力も限られていることから新バージョンへの移行期間等検討課題は多いと思われます。承認されている他のスキームとも連絡を取りながら進めます。
今月は銀ザケ水揚げが最盛期を迎え、「境港サーモン」として地元はもとより関西から関東まで販売しておられる弓ヶ浜水産の竹下 朗社長に思いを伺いました。
「ようやくMELロゴをつけて売れるようになりました」
弓ヶ浜水産(株) 社長 竹下 朗
当社は、鳥取県境港市に本社があり鳥取県と新潟県でギンザケとサクラマスの養殖・加工をしている会社です。MEL認証は2019年に取得しました。しかしながら、MELマークを添付した販売は、残念ながら実現していません。MEL認証マークは、生産者のみが取得しても商品に添付できません。加工・流通段階等に携わる関係者すべてがMEL認証を取得する必要があります。2021年度はようやく準備が整い、当社製品にMEL認証マークを添付して販売できることを嬉しく感じています。
当社がMEL認証取得を決めた理由は、商品を高く販売するためではありません。将来にむけて持続可能な養殖は何かを考え、自分たちの仕事が正しいかを検証し、改善するための基準として適切であると考えたからです。世の中SDGsが注目されていますが、現場社員は、具体的に何をすべきかイメージがわきません。MEL養殖規格は、世界標準として養殖に求められる内容がわかりやすく書かれ、かつ日本の養殖事情に適した内容です。我々は、この規格を勉強し、世界が求める事を理解して仕事をレベルアップさせていきたいと考えています。 鳥取県水産試験場に長く勤務された方が、ご縁があり当社に入社されました。現在、MEL担当者として手順書や記録類の整備をするとともに、認証関連に関する社員教育も担当しています。MEL認証授与式において「MEL認証は取得がゴールではなくスタートである」というお話を聞きました。当社も社内勉強会やMEL審査員による年次審査を通じて自らの仕事を振り返り改善していきたいと考えています。 MEL認証機関が累計100件になるとのことでした。MEL審査員には、これからも厳しい年次審査を通じて我々を鍛えていただきたいと考えております。MELが、日本の水産業を持続的に発展できるよう審査と規格のバージョンアップを通じて我々とともに切磋琢磨する認証機関であることを期待いたします。今後もよろしくお願い申し上げます。
竹下社長有難うございました。過日ある小売業の幹部に伺いましたところ、この時期の旬の銀ザケは「国産・生鮮」と言うことでお客様の受けが極めて良好とのことです。MELロゴと共に大いに発展されますことを期待します。
今月はMEL理事をお務めいただいている双日の山口 佳仁様に、世界で活躍される商社幹部の立場から水産エコラベルについてお話しをお願いしました。
「MEL活動への想い」
双日株式会社 食料・水産部長 山口 佳仁
世界的に持続可能な開発目標「SDGs」の潮流が広がり、日本がどのように
取り組んでいくのかが問われる中で、海の豊かさを守ることに取り組むことは日本の使命の1つだと捉えています。水産業は長らく日本の主産業でありながら、漁業生産量の減少、漁業者の高齢化や後継者不足など数多くの課題を抱えており、そのような課題を解決するためにも、日本の食の安全・安心に対する姿勢を示し、水産業の将来を担う若者が、世界で活躍する場を整えるためにも、マリン・エコラベル・ジャパンの取り組みはとても意義のあることだと考えています。
(双日としての取り組み)
当社は「誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を想像する」という企業理念のもと、事業を通じて「双日が得る価値」と「社会が得る価値」の「2つの価値」の創造を図ってきました。また、環境方針として「グローバル企業として、地球環境問題を経営上の重要な課題の一つとして認識し、持続可能な社会の実現に向け、事業活動において環境保全および汚染の予防に取り組むとともに環境性能の高い競争力ある事業を推進する」を掲げております。
今更申し上げる必要がないほど、将来の世代にとって、地球環境や自然環境の保全の重要性が世界的に見直されております。今の世代が物質的に豊かな暮らしをすることで、将来の世代の豊かな生存を脅かすことになってはいけません。企業活動においても、豊かな社会実現のためには、将来世代が持続的に豊かになるような事業を推進していく必要があり、当社も環境方針の中で、「持続可能な資源の開発・供給、利用を追求する」とし、省資源化・適切なエネルギーミックスの提案、資源の安定供給に取り組むこととしております。
食料資源に関しても、将来需給がひっ迫する恐れがある資源の生産・供給に取り組むこととしており、冷凍マグロの加工・販売を行なっている関係会社にてMSC-CoC認証を取得し、商社として欧州・日本をはじめとする世界各国に対して販売を行っています。最近では英国最大のスーパーであるTescoが2025年までに全店舗のマグロの取り扱いをエコラベル商品に切り替えることをコミットしており、当社もその動きをパートナーと共に供給面からサポートしていく予定です。
また長崎県でクロマグロ養殖を行っておりSCSA認証を取得し、国内はもとより海外に対しても販売活動を行っており、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでおります。
(MELの活動を通じて)
MELは日本発の水産エコラベルであり、アジア初の国際的に承認された水産エコラベルスキームとなっています。しかしながら、日本国内での水産エコラベルの認知度は極めて低い水準に留まり、消費者の水産資源の持続性に対する意識も欧米のそれとは比べものにならないことから、日本の事業者は残念ながら現時点では水産エコラベルを取得するメリットを享受しにくい環境にあると感じています。しかしながら、人々の社会課題に対する意識の高まりを受け、環境に配慮した商品を求める日本の消費者は少ないながらも着実に増えていることも実感しており、マリン・エコラベル・ジャパン活動を通じて、MELの認知普及をより一層推し進めて頂くと共に、我々商社としても持続可能な水産物取引を積極的に推し進めることで、ひいては日本が抱える課題解決、世界の水産業の持続的発展に寄与していきたいと考えています。
山口様有難うございました。厳しいご指摘は真摯の受け止めさせていただき、負託に応えられる活動を心がけます。2018年4月に貴社に伺い、MEL会員となっていただきご一緒に持続可能な社会作りへの貢献をお願いし時の極めて前向きな反応を鮮明に覚えています。あれから3年、あの時の話題となった時代をリードするキーワード「ESGとSDGs」が現実となりました。
今後共よろしくお願いします。
新企画のトップバッターとして、三重県鳥羽磯部漁協和具浦支所様と三重漁連様のタッグによる、MELロゴのついた答志島ワカメの販促の事例を漁連の奥田和敬様にレポートいただきました。
「オリパラの聖火を飾った和具浦産の新ワカメ」
三重県漁業協同組合連合会(本部:津市広明町、代表理事会長:湯浅 雅人)は、環境に配慮し、漁獲・養殖された水産物の認証制度である『MEL養殖認証』を海藻で世界で初めて取得した「鳥羽産湯通し塩蔵わかめ」の販路拡充に取り組んでおり、2021年5月から東海コープ事業連合で販売展開する予定です。
三重漁連は、鳥羽磯部漁協・和具浦支所運営委員会※の生産者の皆様とともに認証取得に取り組み、『MEL流通段階認証 Ver.2.0』を取得しました。持続可能性に配慮して生産された「ワカメ」に認証ラベルを付けて流通させることで、生産現場から食卓までのトレーサビリティを確保するとともに、消費者の皆様が責任ある養殖業で生産された水産物を選択できるよう支援し、自然環境の保全と地域の人々の暮らしを両立させることを目指しています。
※三重県鳥羽市の答志島和具浦産の養殖ワカメは世界で初となる養殖認証を取得済です。去る4月8日、県内の自然環境や産業発展、伝統文化を発信できる場所として「東京2020オリンピック聖火リレー」の走行ルートにも選定されました。
奥田様からご紹介の通り、オリパラの聖火リレーが、ワカメ収穫が最盛期の答志島の和具浦支所の前を通過しました。そのまたとない瞬間を佐藤 力生様(元水産庁勤務、現在鳥羽磯部漁協監事、答志島在住)がMELロゴと聖火が奇跡的に重なる素晴しい写真を撮って下さいました。皆様と共有させていただきます。佐藤様に感謝です。
MEL事務局の人事についてご報告します。2018年6月以来事務局次長兼管理部長を務めており、GSSI承認取得に中心的に貢献しました須藤佳澄が4月末を以て退職します。須藤の労を多とすると共に、皆様からいただきましたご支援に深謝申し上げます。
新しい業務分担は、
- 全般統括 業務執行理事 長岡
- ガバナンス、業務管理、養殖認証、CoC認証(流通)に関する件 冠野
- 漁業認証、CoC認証(加工および全体のロゴ契約)に関する件 秋本
- 総務・広報に関する件 小林
新たに、遠藤知紗子がメンバーに加わり全般のアシスタント業務を担当しますのでよろしくお願いします。
原則この様な業務分担としておりますが、小さなオフィスで、かつリモート勤務態勢も取り入れておりますので、全員で対応させていただきますので引き続きお引き立てをお願いします。
この程MELご案内のパンフレットを刷新しました。お入用の方は事務局までご連絡ください。
変異ウィルスが猛威を振るい、三度目の緊急事態宣言となりました。どうか我が身を守る充分な体制をお取り下さい。
以上