MELニュース2021年 1月 第34号

皆様、新年明けましておめでとうございます。今年もどうかMELをよろしくお願いします。
京都大学の西浦 博教授の「実効再生産数」理論に基づく予測通り感染が拡大し、2回目の緊急事態宣言発令となりました。水産業にとって生産・販売・加工全てに与える影響は甚大です。ワクチンはともかくとして、人と人との接触を減らす以外に制御法が無いのがなんとも悔しい限りです。
新年は多様性を求める動きが拡がる一方で、脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)が突出する論調がメディアを賑わせました。また、フードテック(食料・食品産業における技術の革新)と言う表現の下に、食を変える技術革新が新しい流れとして顕在化する年になりそうです。
MELも皆様とご一緒に日本の水産業の特長である多様性を守りながら、新たな社会に向けて自らの足元を固める丑年にすることを願っています。

1. 国際標準化関連

今月のGSSI承認の更新審査(MOCA)の進捗は、世界的なコロナの感染拡
大により遅れ気味でようやくGSSIの審査員の審査報告が事務局に届けられ
たところです。従って、今月に予定されていましたベンチマーク委員会による
レビューは2月にずれ込みそうで、続くパブリックコメント募集(30日間)
等短縮が出来ないステップを勘案すると遅れを取り戻すのは厳しいと感じています。MEL事務局にもそれなりに負荷が掛っておりますが、クリアしなければならない課題であり、リモート対応で粛々と進めております。

2. 認証関連

1月の認証はCoC2件でした。
1月末を以て旧MELの認証は停止になりますが、認証が失効する取得者は
漁業10件、CoC18件の計28件の見込みです。既に文書でご連絡申し上げております通り、認証の失効とともに旧MEL認証取得の皆様はロゴの使用出来
なくなります。一方で、新MEL認証取得の皆様にお願いしておりました商品へのV2の表示は2月1日から不要になります。
一部の皆様は新MELへの移行が行われていますが(漁業11件、CoC11件が審査中またはコンサル中
)、失効される皆様には永年にわたり継続いただいたことに敬意を表しますとともに、日本における水産エコラベルの先駆けとして普及へのご貢献に衷心より感謝を申上げます。
昨年末現在の新MEL認証状況を整理しますと次表の通りとなりました。

MEL認証取得 都道府県別実績 (2020年12月末現在)

・MEL認証取得1件以上 24都道府県
MEL認証取得0件 23府県 (内7県は海に面してない県)
・認証取得0件の23府県のうち
4県(千葉、富山、兵庫、長崎)において申請中または申請        準備中企業・団体がある
4県(新潟、福井、広島、沖縄)において認証取得に向けたコンサルティング中の企業・        団体がある
・漁港別水揚数量 (2019年みなと新聞)
①銚子 280千t、②釧路 172千t、③ 焼津 171千t、 ④長崎 101千t、⑤石巻 100千t
上位5港の内銚子、釧路、長崎、石巻はMEL 認証取得が0件である。
釧路、石巻、長崎はMEL説明会を開催し、皆様と認証取得について意見交換を行っている

かねてより認証取得の偏りを指摘し、対応する行動を取って来ましたが、残念ながらその成果があったとは言えない実情です。新年の認証取得のための説明会も、既に3件が決定しており、それ以外にも個別の企業や団体からのご相談も増えています。
前表の通り、取得0件の県が約半数あり、また主要漁港も認証取得者が未だ0件がある等、水産エコラベルへの関心の偏りが数字に表れています。
本年は様々な仕掛けを通して、コロナ後の新しい時代に備え取得の偏りを是正出来ることを願っています。

3. イベントへの出展

昨今の状況ですからイベントは活発ではありませんが、様々な主催者から
声をかけていただく様になりました。今月は「みなと生物多様性パネル展」と「Fish1グランプリ」に出展しました。

「みなと生物多様性パネル展」イベント概要
港区内で活動する事業者・団体等の生物多様性に関する取り組みを紹介するパネル展を開催します。
パネル展出展者

実施期間:
2021年1月8日~1月24日

実施場所:
みなとパーク芝浦

主催:
東京都港区

WWFが出展しておられました。

 

 

例年日比谷公園で盛大に開催されますFish1グランプリは今年は時節に合わせ「おうちFish1グランプリ-ON LINE-」となりました。1月22日から2月26日までの長期イベントですので、Fish1グランプリのサイトから覗いてみて下さい。

おうちでFish-1グランプリ-ONLINE-
https://pride-fish.jp/F1GP/2020/booth/mel/index.html

4. 認証取得者からの報告

今月は、事業者にとりまして多忙な年末年始に北日本では豪雪が追い打ったこともあり、認証取得者からの報告はお休みとさせていただき、来月に先送りすることにいたしました。ご容赦ください。

5. 関係者のコラム

今月は、永年にわたり日本の海洋政策をリードしてこられた日本海洋政策学会前副会長の寺島 紘士様にお願いしました。寺島様には海洋と水産について世界における日本の存在感をどう高めるかご指導をいただいておりおます。
寺島先生は自らのブログで海洋に関する啓蒙の発信を続けておられます。

「海洋政策は今 寺島紘士ブログ」
https://blog.canpan.info/terashima/

「マリン・エコラベルMELに対する期待」 

寺島 紘士

20世紀の後半になると、魚食の普及、漁業の世界的な発展の中で私たちの食生活を支える水産資源が過剰な漁獲等によりが危機的状況に直面するようになった。以来、これを解決するために世界を挙げて海洋資源を守るための持続可能な漁業の取組が進められている。
「持続可能な開発目標SDGs」の「目標14:海洋・海洋資源の保全、持続可能な利用」にも、「レジリエンスの強化などのよる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋および沿岸域の生態系の管理のための取組を行う」、「水産資源を、最大持続生産量のレベルまで回復させるため、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。」等が掲げられている。
さて、このような重要な目標の達成に向けた取組みには、直接漁業やその流通・加工に携わる人々の取り組みが必要であることはもちろんであるが、それだけでなく広く魚を食する一般市民にもこの取り組みへの参加の道が開かれている。しかし、このことはまだ人々の間に十分に浸透していないようにも思われるのでそのことをここで取り上げてみたい。
振り返って見ると、海洋生物資源を保全し、持続可能な漁業を維持していくためには、漁業を直接管理するだけでなく、市場あるいは消費者サイドからの取組みの道もあるということが人々に認識されるようになったのは、1990年代に入ってからだったろうか。1997年には水産物の持続的利用を目指してMSC(海洋管理協議会、本部イギリス)が水産エコラベルの認証活動を開始した。持続可能な漁業による漁獲物とIUU漁業などの漁獲物とを市場で消費者が選別し、前者のみを受け入れるというトレーサビリティのある市場の構築を支えるのが水産エコラベルで、これは非営利の民間組織のイニシアチブからから生まれた。
そして水産エコラベルは、2005年にFAO水産委員会が「海洋漁業からの漁獲物と水産物のエコラベルのためのガイドライン」を採択したことを契機に世界に大きく広がった。
私もある時MSCの水産エコラベルのことを聞いて、これにより一般市民が水産物の消費者として持続可能な漁業の推進に参加し貢献することができるのは素晴らしいと思ったのを覚えている。
日本でも2007年に(一社)大日本水産会内にマリン・エコラベル・ジャパンが設立されて水産エコラベルの活動が始まった。しかし、その活動はなかなか十分な社会の認知を得るには至らないでいたが、2016年にマリン・エコラベル・ジャパン協議会(MEL協議会)が一般社団法人として設立されて、事態が大きく動き出した。MEL協議会は、「日本発の世界が認める水産エコラベル」を作り上げることを目指してスタートし、スキームの国際化と国内外における認知度の向上を通じて、2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会の食糧調達基準への対応、日本水産物の輸出促進への貢献、ひいては日本の水産業の新たな発展とSDGsの実現に貢献することを目標にして活動を開始した。
そして、2019年12月には、ついに水産エコラベルスキームの国際プラットフォームであるGSSI(Global Sustainable Seafood Initiative)の承認を取得して、「MEL」は世界で9番目、アジア初の国際的に承認された水産エコラベルとなった。厳しいGSSIの審査をクリアしてこれを実現したMEL協議会の皆さんのご尽力に敬意を表したい。
日本発のマリン・エコラベルMELが国際的に承認された意義は大きい。直接的にはわが国が持続可能な漁業に取り組んでいることを内外に発信してわが国の漁業に対する信頼性を高め、水産物の消費の拡大を促がすとともに水産物の輸出振興にも貢献することが期待される。最後に冒頭の問題提起に戻ると、マリン・エコラベルは、水産物を消費する市民が、エコラベルの付いた水産物を選別して購入することによりその効果が発揮される。市民の皆さんには、海洋・海洋資源の重要性を認識し、自らも持続可能な漁業の形成に積極的に参加するという前向きな気持ちを持って、マリン・エコラベルのついた水産物を率先選別することをあらためてお願いしたい。
なお、これに関しては、MEL協議会が、認証数と対象魚種の拡大等とともに、流通事業者、一般消費者の認知度の向上を当面の目標に掲げて取り組んでいることを評価したい。

寺島先生有難うございました。改めて水産物を消費する市民の皆様の参加の大切さを指摘いただき、心に引き締まる思いです。認証取得事業者、認証・認定機関の皆様はじめ広く関係者とともに社会の期待に応えられる活動を進めて参ります。今後ともご指導をお願い申上げます。

 

アメリカで「民主主義を立て直す」を旗印にバイデン政権がスタートしました。コロナとの戦いを最優先に取組まざるを得ないアメリカにとって、課題の先行きは未知数ですが厳しい挑戦の道が待ち構えている様に思えます。
日本ではコロナの感染拡大の中、年末から久々の大寒波に見舞われています。雪国の皆様は勿論のこと、九州でも降雪があり事業活動に支障が出ることを
心配をしております。
MELの事務局も、行政からの不要不急の外出取りやめ等自粛の要請に沿ってテレワークを増やしていますが、交代で出勤をしていますので必要なご連絡は全く問題ありません。お手伝いが出来ることがありましたら何なりと仰っていただき、微力ながらコロナに負けない活動をしたいと念じています。
以上