MELニュース2023年4月 第61号

2023年4月 第61号

(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会
事 務 局

 街中に新社会人の姿が目立ちます。今年の新社会人はコロナの影響をもろに受け苦しい学生生活を強いられた年代です。厳しい中で学んだことを是非これからの日本に活かせるよう温かく迎えたいと願っています。
少し前から通勤交通機関が微妙に混むことが多くなっています。その原因は運転手不足で運行本数を間引かざるを得ないためとのことです。24年問題以前に、労働人口減少の影響がこんな所から始まっていると思うと、先行きへの懸を深刻に感じます。

1.国際標準化関連

現在ベンチマーク委員会の手にあるGSSIの審査は、委員会メンバーと審査員との間で淡々と進んでいます。何点かの指摘がありますが、MELからの情報を追加することで間もなく次のステップに移れると受け止めています。
先行して審査に入ったアラスカRFMは4月11日から1ヶ月間のパブコメ募集が行われています。こちらは少し遅れている様です。

2.認証関連

今月の認証発効は、現時点でCoC 3件の他、4件が間近に予定されています。コンサルの申し込みを見ても、少し勢いが戻って来たと受け止めています。
先月のMELニュースで報告しました海生研の第1号の承認発効の記述に誤りがありました。正確には、審査機関としてJABの認定を得るために求められる2件の実地審査のうちの1件目の承認が発効したことの報告であるべきところ、海生研のJAB認定が完了したと受け取れる文面となっており関係の皆様にご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます。

3.理事会を開催しました

3月31日に第30回理事会を開催しました。
今回の理事会は、令和4年度の事業報告および収支見込みと令和5年度の事業計画ならびに収支予算の審議、承認が主要議題でした。収支見込みにおいて、収入面では会員数の伸びの停滞もあり減収となり、支出面では事務所移転経費の負担があり令和4年度決算は赤字となる見込みです。事務所移転経費は一時的支出とは言え財務的に自立するためにも、収入の2本の柱である会費収入と事業収入の増収が不可欠です。目標として描いている会員数100、認証数500件に向け、皆様のご理解が頂けるよう地道な努力を続けます。
報告事項として、「MEL認証番号の新しい管理規程」の実施を説明いたしました。本件は、審査機関の複数化に伴い、今まで使用してきた日水資様の様式では不都合が生ずるため新たに「認証番号の付番規則」を定めたものです。
7月1日より適用を開始します。新制度への移行期限は3年ですので、包材等都合の良いタイミングに移行していただくことをお願いします。
MELホームページへの掲載とともに認証者の皆様にも直接ご連絡しました。

4.マネージメントレビュー会議を開催しました

4月21日にSO(スキームオーナー=MEL協議会)、AB(認定機関=JAB)、CB(審査機関=日水資、海生研)による3者マネージメントレビュー会議を開催しました。
マネージメントレビューはGSSIの基準(ベンチマークツール)でスキームオーナーに実施を求めているもので、この要求に沿ってMELの業務遂行および認証機関、認定機関の活動につき定期的に報告と相互チェックを実施しています。今年の会議はSO、AB、CB各機関の報告と議論を行い、細部にわたり透明性を高めるためにも有益であったと受け止めています。

5.認証取得者からのご報告

今月は和歌山県有田振興局の島村泰司様にご相談し、シラス操業に忙しい紀伊水道中央機船船曳網組合の元組合長である西村文希様にMEL認証取得の経緯について寄稿いただきました。

「MEL認証と船びき網漁業の将来について」

紀伊水道中央機船船曳組合 元組合長  西村文希

 紀伊水道中央機船船曳組合は、和歌山県有田市にある有田箕島漁協に所属する瀬戸内海機船船びき網漁業者で構成するグループで、日ノ御埼より北の紀伊水道を漁場にシラスを漁獲対象として周年操業しています。
操業時間は日の出から日没までと決まっていますが、平成30年から他の地区の船びき網漁業者との独自の取り決めで、操業時間を午前中のみとして資源管理に取り組んでいます。

この取り組みによって漁獲量が低下する船団もありましたが、全体を見渡すと、盛漁期の極端な魚価の低下が無くなり、また、平均的に水揚げが続き、結果的に単価がアップする効果も見られました。加えて乗組員の肉体的な疲労も軽減され、多くの点で好評でありました。そうした中で、取り引きのあるシラス加工業者から、このMEL認証取得の話を聞き、認証取得をしないかと提案がありました。当初は「認証取得して何か良いことがあるのか。」「本当に認証取得できるのか。」と半信半疑な気持ちがありました。しかし、よく話しを聞いて自分たちの業界のためになると思い、認証取得を目指そうとなりました。認証取得に際しては漁協や県の協力を得られたのは大きかったと思います。
認証取得した令和2年度は、それまでの操業時間短縮の効果があったのか過去最高の漁獲量を達成することとなりました。そして翌年の令和3年は漁獲量こそ例年並みであったが、年間を通して例年よりも好調な浜値で推移することとなり、MEL認証の効果もあったのではと思われました。
昨今の水産業界は高齢化や後継者不足が叫ばれて久しいが、今後の船びき網業界は、安心して次の世代に引き継げるような操業形態・漁獲量・魚価を維持することが重要で、今の取り組みを続けて行きたいと強く思っています。
また、MEL認証の制度がさらに広く認知され、多くの人々に求められる品物になればとも思いますので、皆さんのご協力をよろしくお願いします。

西村様、島村様有り難うございました。2018年11月28日に箕島にお邪魔し、漁協の会議室でMEL認証の説明をさせていただいたことを昨日の様に憶えています。当然のことながら、出席者は漁業者の皆様でMEL認証を取得したらどんな利点があるのかについて厳しい質問がありました。
そして今、皆様が漁獲されたシラスが日本生協連様のCOOPサステナブル
の主力商品となっていることを嬉しく受け止めています。紀伊水道のシラス漁業が皆様の努力を通して更に持続、発展することをお祈りします。

6.関係者のコラム

MEL誕生秘話を、当時大日本水産会専務理事として仕切られた重 義行様に披露いただきました。

国際水産エコラベル「MEL・JAPAN」誕生前夜

元大日本水産会専務 重義行

MELは今では世界的に通用するエコラベルに成長し、日本の漁業が行う資源管理の取り組みを国際的な基準で評価するシステムとして世間的にも認知されています。タイトルは少し大げさですが前身となる大日本水産会が大水MELとしてエコラベル認証の活動を行っていた当時からどのようにして現在の組織に至ったか、かいつまんでお話したいと思います。

水産におけるエコラベルは当初は環境保護団体のドルフィン・フリーのような水産業に対するネガティブ・キャンペーンに使われるものなどがあり、これらの排他的なエコラベルが欧米のマーケットに水産物を輸出する漁業国やアフリカ途上国等にとって輸入障壁となったためFAOの場で取り上げられ、FAOが自らエコラベルのガイドラインを示すこととなりました。またアイスランドやアラスカ等漁業国に水産資源保護の歴史や手法を踏まえたエコラベルが立ち上がり、ここに漸くエコラベルは本来の持続可能な水産業を育てるための有効な手法の一つとして動き始めました。大水MELも漁業者が自主的に実施する資源管理活動などを正当に評価、推進する仕組みとしてこの時期に立ち上がりましたが、その後エコラベルが乱立しFAOのガイドラインだけでは指針として不十分な状態になると、更にGSSI(Global Sustainable Seafood Initiative)というNPOがFAOの支援を受け国際的に公平かつ厳密な仕組みに立った水産エコラベル基準を策定することとなりました。
当時のFAOガイドラインをベースにした大水MELは、スキームオーナーである大日本水産会が認定する水産資源保護協会が漁業を認証するという2段階のエコラベルであり、新たにGSSIが定めたエコラベル・システムの要件の一つである厳格な認定機関、認証機関、スキームオーナーの3者独立の構造にはなっておらず、また認証機関を認定する認定機関は国際的な認定機関協会のメンバーでなければならないなどGSSIの基準に達するには多くのハードルがありました。
このため先行する林業のエコラベルを参考に東京大学で水産と環境の問題に詳しい八木教授のご指導を受けるなど情報の収取に努めるなどして、何とか一番の難関であった認証機関を認定する認定機関に国際認定機関協会の一員である日本適合性認定協会(JAB)の協力を得る見込みが得られて、JABと認証機関である水産資源保護協会そしてスキームオーナーである大日本水産会の独立した三者によるシステムが可能となりました。これによりGSSIへの承認申請の準備態勢が整ったところでしたが、漁業者団体である大日本水産会がスキームオーナーでは問題があることからマリン・エコラベル・ジャパン協議会はGSSIの要件に適合するよう一般社団法人として独立することとなり、新たに新生マリン・エコラベル・ジャパン協議会の会長の人選という問題が生じました。
新組織を国際的に通用する組織として成長させるためにも水産業界に詳しいだけではなく、広く国際的なセンスを有し、水産業、経営に明るく、国内流通業界や国際的にも通じているという、ないものねだりの人材探すという難しい課題となりましたが、丁度と言っては失礼ですがたまたま垣添さんが日水の相談役を辞されて顧問となられていました。元大日本水産会の副会長でもあり、お人柄も良く存じ上げていましたのでこの方しかいないと、無理は承知の上でお願いしたところ、業界の発展のためならと快くお引き受けいただけることとなり、一同ほっとしたところでした。
これにより新体制も整い、その後は垣添会長の精力的なご活動並びにスタッフの皆さんの大変なご努力によってGSSIの承認をめでたく勝ち取り、MEL JAPANが現在の確固たる地位を築きあげるまで成長いたしましたことは皆さんご承知の通りです。
発展し、国際的にも認知され、国内でSDGS推進のためにエコラベルを求める流通業界や水産物を輸出する企業等にとって大きな力となっていることは、MEL JAPANの黎明期に関わった私の誇りでもあります。これからもMEL JAPANがさらに飛躍して日本の漁業、養殖業、水産関係企業の強力なパートナーとして持続的水産業のために活躍されることを期待しています。
(上記は小生の拙い記憶頼りの記述ですので思い違いなど在りましたらご容赦願います。)

重様有り難うございました。2016年12月1日に開催しましたMEL協議会の一般社団法人としての設立総会は大日本水産会様と全漁連様のたった2会員だけの寂しい門出でした。MELは「今日が始まり」のこの日を決して忘れることはありません。どうか今後ともご指導をお願い申し上げます。

7.イベント関連

① 4月1-2日に幕張メッセで開催されました「カーボンニュートラルを考える2023」の水産庁ブースに出展しました。このイベントは総務省、環境省、国土交通省、水産庁、千葉県等が後援する大規模なもので、人気アイドルグループが中央ステージや各ブースに立って販促物配りや説明を行うと言う今までになかった催しで、大いに盛り上がりました。
水産庁ブースは「さかなの日」をPRし魚食普及を訴え、多くに来場者に水産物の持続可能な利用を推進する水産エコラベルを知っていただく企画で、MELとしては約1000名のインスタグラムの直接のフォロアーを獲得しましたが(アンバサダー経由のフォロアーは約20万名)、アンケートの協力いただいた来場者はエコラベルの対する無関心層であった(エコラベルを認知している人はほぼ皆無)ことは、大きな反省材料であるとともに、これからこの様な無関心層にはどの様なアプローチが有効か真摯に考えます。

② 今年のSeafood Expo Globalは4月25-27日に昨年に続きスペインのバルセロナで開催されます。MELからは冠野事務局長がGSSIやCSC等とのとの打ち合せを兼ねて参加します。状況はMELニュース来月号で報告させていただきます。

③ 開幕が2年後に迫った大阪・関西万博の「持続可能性に配慮した調達コード」
(第2案)に対するパブコメが4月14日に締め切られました。MELからは、GSSIの承認についていたMEL Ver.2.0のVer.2.0の部分の削除を申し入れています。(GSSIにも繰り返し削除を求めていますが、未だホームページは訂正されていません。)
大阪・関西万博は、ご承知のように来場予想2820万人、1人2食としても56百万食の巨大需要が発生します。東京オリンピッックと比較して、事業者数は当然多くなりますが、どの様にアプローチしたら良いか間もなく具体化してくると思われます。認証事業者の皆様の内外の市場拡大に繋がる積極的な売り込みを期待しています。

8.販促およびSNS投稿

MELニュース2月号に石狩湾ニシンに関し石狩湾漁協の和田専務の報告を掲載させていただきましたが、今月はおいしく召し上がっていただく挑戦をアンバサダーさんにお願いし、SNSに投稿いただきました。

和田専務から生食のお薦めがあり、怖々食べてみたけどとてもおいしかったと大好評でした。
アンバサダーの皆さん有り難うございました。

MEL協議会アドバイザリーボードの委員をお務めいただいておりますWFF(ウーマンズフォーラム魚)代表の白石ユリ子様がこの度滞在先のコートジボアールの農業勲章を受章されました。白石様が続けておられるコートジボアールの漁村女性の活性化のための貢献が高く評価されたもので、MELとしても大変嬉しく、心からお祝いを申し上げます。なお、白石様の活動の一端はMELニュース2021年8月第41号「MELエコバッグアフリカを行く」でご紹介しております。

先月から対応が緩和されたもののまだ油断の出来ないコロナ感染ではありますが、4年ぶりの対面でのイベントが各地で開催され、やはり盛り上がりが違うという声に納得しています。まだマスク着用90%とのこと、これから夏に向けマスクなしで活発な活動ができる日を願っています。

以上