MELニュース2021年 7月 第40号

開催都市の東京に緊急事態宣言が発出され、不要・不急の外出・移動の自粛等が要請される中、オリンピックの幕が開きました。何もかもが異例の大会となりましたが、盛り上がりと国民の安全と安心が確保された上で世界の平和に資することを祈りたいと思います。
官庁関係の人事の季節、水産庁も長官以下の交代がありました。在任中の労に深謝すると共に新しい時代に向け蒔いていただいた種をしっかりと育て実らせたいと願っています。

GSSIの承認継続審査(MOCA)は着実に前進しています。MEL事務局は717日に3人のIE(審査員)からの指摘に対する最終回答文書をGSSI事務局に送りました。GSSI事務局は、IEの確認が取れ次第ベンチマーク委員会に諮ることになります。次の大きな山であるパブコメは8月中旬から30日間の予定です。
MELスキームにとって、国際標準化のもう一つの重要課題である認証機関に対する認定機関による年次審査の書類審査が789日に行なわれました。即ち、FAOのガイドラインに沿って日水資様の過年度の業務執行をJAB様が審査するものです。計4点の不適合の指摘があったと連絡を受けておりますが、スキームオーナーだけでなく認証機関の年次審査も佳境に入っております。

今月の認証は養殖2件、CoC1件でした。
特記事項としては、CoC認証において小売業の認証の3件目となるヨークベ ニマル様の認証が発効しました。3件はいずれもセブンアンドアイ・ホールディングス様のグループ企業ですが、店舗数で467となり展開エリアも20都道府県で日本の人口の68.6%をカバーすることになります。まだ東日本に偏っていますが、間もなく認証が全国に広がりCoC認証を取得された店舗にMELロゴつきの商品が陳列され、消費者の皆様の手にとっていただけることを期待しております。

75日に本年度上期のアドバイザリーボードを開催しました。コロナの関係もあり、昨年の26日以来の開催となりました。松田 裕之先生を座長として、MELが直面する課題につき広範な議論をいただきました。①現状MELの弱点である消費者への浸透不足への対応、②MOCAにおいて指摘を受けている点につきMELとしてどの様に対応、発信するか、③MELの特色である多様性を差別化のポイント活かすには? 等々に関し有益なご意見をいただきました。

座長の松田 裕之先生が、201912月に開催されたMELのワークショップ(たまたまGSSIによる承認と重なるタイミングであった)の全体総括で纏めら れた「MELは多様な皆様が参加する学びの場である。日々学びながら進化を続ける」をしっかり受け継いで参ります。
なお、ご出席ただきました寺島 紘士先生がご自身のブログ「海洋政策は今」でMELの現状を取上げられております。寺島先生は海洋問題のレジェンドで あり、先生からの発信によりMELの目指す姿が海洋関係者間で、ひいては 日本の社会により深く理解されることを嬉しく受止めています。
寺島先生のブログはhttps://blog.canpan.info/terashima/です。

79日に全漁連様が主催された「全国漁連・信漁連 専務・参事会議、 指導担当部課長会議 合同会議」において、MEL認証取得推進についてお話 をさせていただきました。Web会議でありましたが主催者、水産庁からの臨 席を含め160名の大会議でした。会議に参加された40の都道府県の内24は 既に何らかの形で説明会を開催しておりますので、今回はコロナ後の水産業 に焦点を当てた内容のお話にしました。また、現在の認証取得も24都道府県の129件でありますが、逆に1件の認証取得がない府県が23あると言うことであり、改めて水産エコラベルへの関心の濃淡を感じました。
時間の関係もあり会場では活発な質疑応答とまでは行きませんでしたが、終了後メールを頂戴する等関心の高さとともにいまだ漁業者に「認証を取得するベネフィットは何?」が強くあることを伺わせました。今後も機会を見つけ漁業者の皆様との接点を強化して参ります。
当日配付資料はここからご覧下さい。
https://www.melj.jp/wp-content/uploads/2021/07/全国漁連専務・参事会議_.pdf

この様な場の設定にご配慮いただきました全漁連様に深謝申し上げます。

遠洋カツオ一本釣り漁業は日本かつお・まぐろ漁業協同組合所属の22隻が 認証されたことを先月号でご報告しました。この結果、自社内で漁業加工 流通のMEL認証商品サプライチェーンを完成された事業者が出ましたが、う ち焼津の高橋商店の高橋章仁社長に、状況をお話しいただきました。

「消費者のためにMEL認証を生かす」

株)高橋商店
代表取締役社長 高橋 章仁

 

我々、株式会社高橋商店は鰹・鮪の水揚げで有名な静岡県焼津市に拠点を置き、一本釣り漁獲の鰹やびんちょう鮪の加工を生業とする水産加工会社です。

我々は以前よりマリン・エコラベル・ジャパン(MEL)の活動や理念に共感し、旧MEL(Ver.1.0)の時代から認証を取得し、現在ではGSSI承認となったMEL CoC流通加工認証Ver.2.020206月に認証を受けました。
そしてこの度、勝栄丸を含む遠洋かつお一本釣り船が待望のMEL漁業認証Ver.2.0の発効を受け、製販一貫体 制を行っている弊社にとりましてもMELにおいてようやく点と点が線となってつながった感があります。これで漁獲から加工までMEL Ver.2.0認証を受けた製品を販売店様や消費者の方へアピールできる準備が整いました。
弊社としましては、遠洋かつお一本釣り船の漁業認証と弊社のCoC認証が共に MEL Ver.2.0となったのを機に、今後より多くの小売業様によるマリン・エコラベル認証の取得を期待している次第です。
またSDGsの考えにもあります消費者が「環境に配慮した商品の選択ができる」、「必要なものを選んで消費する」ということに対して、その目印となる「認証を受けたものを選ぶ」という選択肢としてMELの存在は欠かせないものと考えております。そして、資源保護や環境への配慮とビジネスとしての側面をうまく両立させながら今後も社業の発展に努めてまいりたいと思っております。

 高橋社長有り難うございました。漸く新MELで流通可能となりました。 高橋商店様の「カツオのたたき」は広く東北から近畿・中国地方まで配荷されており、自社で漁業から加工・販売まで完結された個包装品はMELCoC認証を取得していない小売業でも何ら問題なく取扱うことが出来ますので、この機会に大いに販売を伸ばしていただくことを期待申し上げます。

環境保全、水産資源の持続的利用を推進しておられる、日本生協連様の 松本 哲様に生活協同組合活動から見た水産エコラベルへの期待につきお話しをいただきました。

「コープ商品での水産エコラベル認証の取り組み」

日本生活協同組合連合会
第一商品本部 本部長スタッフ(サステナビリティ戦略担当)
松本 哲

 日本生活協同組合連合会(略称:日本生協連)は、各地の生協や都道府県別・事業種別の生協連合会が加入する全国連合会です。19513月に設立され、現在、314の生協・連合会が加入しています。 会員生協の総事業高は約3.7兆円、組合員総数は約2,996万人です。(2020年度末)
全国の生協は、それぞれが別法人として事業や活動を行っており、日本生協連と会員生協は本部-支部という関係ではありません。日本生協連の商品事業は、主に「コープ商品の開発」と「全国の生協への供給」の二つの機能があり、「コープ商品の開発」では、主にCOOPマークのついたプライベートブランド(PB)の商品の開発を行っています。
日本の生活協同組合には、多くの組合員が「くらしや社会をより良くするため」様々な活動に取り組んできた歴史があります。大気・河川・海洋の汚染など公害問題が深刻化した 1970年前後から環境に配慮した洗剤の発売・普及や産直の取り組みが始まり、1990年代には日本生協連の独自の基準による環境配慮マーク付き商品の発売も行いました。その後、社会的に第三者認証のエコラベルの仕組みの構築が進んだことから、独自のマークは解消し、「環境に配慮した商品の運用基準」に外部の第三者認証の基準を採用する方針としました。
今年5月に、日本生協連は持続可能な社会を実現するために全国の生協で推進する2030年までの政策として①「生協の2030環境・サステナビリティ政策」を策定しました。この政策の策定に合わせて、②「コープ商品の2030年目標」※を設定しました。また、サプライチェーンを通じて人権を尊重し、環境に配慮した「責任ある調達」を一層推進するため、③コープ商品「責任ある調達基本方針」を策定し公開しました。(注:②③は、日本生協連が販売者となるコープ商品を対象としたものです。)
※ニュースリリース参照
https://jccu.coop/info/newsrelease/2021/20210519_02.html

コープ商品での水産分野のエコラベルの取り組みとしては、2007年にMSC認証、2012年にMEL認証、2016年にASC認証のラベル・ロゴを付けた商品を発売しました。現在は、海外産原料に由来する商品調達が半分を超えていることを考慮して国際認証であるMSC/ASC認証を重点としつつ、事業上の必要性に応じて、GSSIが認定した水産認証スキームを採用する方針としています。これまで展開してきた3つの水産エコラベルに加えて、BAP認証ロゴを付けた商品を2021年度下期より発売予定です。
日本生協連水産部門のコープ商品供給高(会員生協への出荷金額)に占める水産エコラベル付商品の構成比は、2020年度実績で12.2%(MSC10.6%ASC0.8%MEL0.8%)ですが、2025年度までに20%以上に引き上げることを目標としています。また、前述の「コープ商品の2030年目標」では、バックキャスティングによる設定で「水産物を主原料とする仕様指定商品および生鮮水産物について、MSC/ASC認証商品の拡大を重点に、GSSIが認定した認証スキームによる認証品の供給額構成比を50%以上とします」としています。

日本生協連が認証エコラベルを積極的に活用していく理由として、環境や人権等に配慮して生産された水産物や、それらを原料とした商品の取り扱いを拡大するためには、それらに関わる要件を備えた第三者認証を利用することが現状ではもっとも効果的と考えられることがあげられます。また、商品を利用する生協組合員とのコミュニケーションにおいても、エコラベルは宅配のカタログの紙面や店舗の売場で、持続可能な水産物を原料とした商品の訴求に役立ちます。
日本生協連は、エコラベルについて生協組合員の認知・理解をすすめるためにコープのエシカルという冊子を2017年から毎年作成・更新し、また、動画などを作成して、会員生協での組合員・職員の学習活動での活用を呼びかけています。日本生協連が毎年実施している組合員モニターアンケートでは、MSC認証を例にとるとラベル付き商品を「買ったことがある」「見たことがあるが買ったことはない」の合計は、201615.9%→201720.7%→201829.7%→201927%→202032.1%に上昇してきました。商品配置と組合員とのコミュニケーションの取り組みをすすめたことが反映したものとみていますが、ラベルの認知がすすむとラベル付き商品の利用意向が高まる傾向もみられます。

2021年から、SDGsやエシカル消費への取り組みを一層発展させるため、「サステナブルな農林畜水産物およびそれらを主原料とする商品」について、共通のロゴマークを付けてシリーズ化し、「コープサステナブル」として展開を開始しています。日本生協連が採用する水産エコラベルは複数ありますが、それらのロゴ・ラベル付き商品をこのシリーズに組み入れ、共通ロゴマークの下に「海の資源を守る」というメッセージを入れて、生協組合員がより利用しやすくなるようにしたいと考えています。
マリン・エコラベル・ジャパン(MEL)について、コープ商品ではこれまで限られた魚種(カツオ)での展開だったこともあり、生協組合員の認知はこれからになります。MEL旧規格の終了により、現在、MELロゴ付きコープ商品はありませんが、新規格での認証取得がすすんできましたので、2021年度下期から2022年度にかけて、ワカメ、養殖サーモン、カツオ、しらす干しのコープ商品にロゴを付けていく予定です。生協組合員は国産の水産物の利用意向が強い傾向がありますので、MELが国内外で評価・認知される基準として定着し、認証基準を一つの指標として日本の漁業・養殖業における資源管理や生態系保全などの改善の取り組みがすすみ、消費者が持続可能な国産水産物をより多く利用できるようになることを期待しています。

 

松本様有難うございました。水産エコラベルの生活協同組合活動における 位置づけが良くわかりました。また、MELが十分にお役に立てていない現状 を真摯に受け止め、認証を取得しておられる生産者の皆様とともに期待に応 えられるよう努力を重ねます。

MEL認証の第1陣が発効したのは2019228日でした。その中心 メンバーの北海道漁連様はMEL認証の最大の魚種である秋サケについて 漁業加工販売のサプライチェーンをテコに積極的に販促を展開して来ら れました。今月は販促を推進しておられる倉地 宏樹様に手応えをお話しいただきました。

「北海道におけるMEL認証の現状と取進めについて」

北海道漁業協同組合連合会
販売第二部 次長 倉地 宏樹

 

北海道漁業協同組合連合会は、北海道内の漁業協同組合によって出資設立された生産者団体で、北海道の水産物の流通と魚価の安定に向け日々、活動を行っております。エコラベルについては、大漁となった秋鮭にエコラベルを付けて輸出する目的で取組み始めましたが、最近ではSDGsの広まりと共に国内でも認知され、各方面から色々なお問い合わせを頂くようになってきました。
MEL認証につきましては、漁業認証(ver.1)の段階からMEL協議会様と連携させて頂き、2019年2月に秋鮭定置網漁業で漁業認証(ver.2)を取得しております。また、2020年には、関連会社(工場)全てでCoC認証を取得し、生産体制を整えることが出来ました。
現在、MELマークを付けて製造している商品は、いくら醤油漬、秋鮭フィレ、秋鮭ドレスになりますが、今後はフレークやフライ製品にも広げて行く予定です。これら商品に加えて、今年の秋には「鮮秋鮭フィレ」にもMELマークを付けられるように準備しています。鮮秋鮭は、秋の味覚として毎年、全国の量販店様でお取扱い頂いており、秋鮭製品の中でも露出の高い製品です。これにMELマークを付けて流通させることにより、認知向上にお役に立てればと考えております。

また、エコラベル認証がオリ・パラの調達基準の1つになったこともあり、秋鮭についてはMEL認証食材としてオリ・パラに採用して頂いております。
一方、北海道の漁業の現場においてもSDGsの流れを受けて、漁協や生産者の間でも水産エコラベルへの関心が高まっており、秋鮭、北寄貝に続いて、現在2漁業がMEL認証取得に向け、検討を進めています。
これからもMEL協議会様、関係団体の皆様と連携させて頂きながら、北海道から漁業認証の拡大と、MEL製品の認知向上と消費拡大に向けて、協力させて頂きたいと思いますので、今後とも宜しくお願い致します。

 

倉地様有難うございました。折からオリンピックが始まりました。北海道漁連様の「北海道サーモン」が日本を代表する食材として選手村で世界の皆様においしく召上がって頂き、日本の思い出になるとなることを期待しております。

また、ご一緒に北海道産品の認証拡大を進められることを願っています。

この度、MELの活動をより多くの方に知っていただくために、インスタグラムアカウントを開設しました。
インスタグラムは、写真や動画などで視覚的に情報発信ができるSNSで昨今企業や団体が運営するアカウントも増えています。
投稿は、クイズやプレゼントキャンペーンなどの企画を通してSDGsや水産エコラベル全体への理解を深め、その中でも特にMELを身近に感じていただけるような内容を心がけています。
また、MEL認証取得事業者様の紹介や、認証商品の写真を投稿することでいつもMELの活動にご協力をいただいている皆様の認知度アップにもつなげていきます。

URL: https://www.instagram.com/meljapan/

(もしくはインスタグラム内@meljapan で検索)

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MEL事務局の担当は小林由香里ですので、お気づきの点がありましたらご連絡頂けると幸です。

 

 梅雨明けと共に猛暑がやってきました。今年も気候変動を実感する梅雨末期 でした。被災された皆様にお見舞いを申上げます。
例年のことですが梅雨の雨と猛暑が赤潮を連れて来ているようで、八代海で は被害が出ていると伺い心を痛めています。先月号で触れましたがブリのモジ ャコの不漁も頭が痛い問題ですが、MELニュース昨年の7月号に「コロナの みに惑わされることなく、人類の将来に向けて取り組むべきことにシッカリ眼 を向けたい」と書きました。取り組むべき課題は山積ですが、皆様とご一緒に ひとつひとつ的確に対処したいと念じています。
末筆ながら、皆様のご健勝をお祈りします。

以上