2020年7月 第28号
新型コロナに加え異常な長梅雨の中、経済の立て直しと「新たな日常」のあり方が模索されています。日照不足の影響も心配されますが、日本各地で発生しました集中豪雨の被害に遭われた方々に心からお見舞いを申上げます。
新型コロナウィルスによる産業活動の低下が、世界各地で大気汚染を改善していると報告されています。今年の世界のCO₂排出は前年比8%減少すると試算されていますが、パリ協定の目標を達成するにはこの状態を10年続けなければならないとされ、パリ協定のハードルの高さとともに、持続可能な社会実現の難しさを浮き上がらせています。
水産エコラベルは持続可能な社会を担う重要なインフラであり、皆様とご一緒に自らを守りながらポストコロナの時代に貢献出来ることを願っています。
1.GSSI関連
今月はMOCA(承認の継続審査)とGSSIの新しい基準ベンチマーク・ツールV2.0への対応が主要な業務でした。MOCAは粛々と準備を進め、12月から始るGSSI審査員による書類審査に備えています。GSSIの審査員3人は、昨年承認申請時担当した審査員と同じメンバーの予定と伝えられています。
ベンチマーク・ツールV2.0のパブコメは6月末で締め切られ、MEL事務局からのコメントを含め多数の意見が寄せられた様です。コロナへの対応と夏休みの季節でもあり、GSSIの計画では十分な時間(2021年第1四半期から運用開始を予定)を充ててあるものの、それなりの時間が掛るでしょう。
MELの場合、今取り組んでいますMOCAが終了すると(もちろん合格しての話ですが)、次はベンチマーク・ツールV2.0の審査申請の準備(MELの認証規格の修正等)が続くことになります。
2.認証関係
今月の認証発効は漁業1件、養殖4件、流通加工3件の計8件でした。
累計で漁業5件、養殖29件、流通加工28件の計62件になりました。
既に認証が発効しているにもかかわらず、コロナ等の関係で認証証書の授与式をお待ちいただいていた認証件数が計35件ありましたが、ようやく7月17日に授与式を実施することが出来ました。会場はソーシャルディスタンスが確保できる石垣記念ホールをお借りし出来る限りの準備で臨みましたが、あいにく東京の感染者数が急増するタイミングと重なり出席を予定されていた方々が上京出来なくなるという誠に申し訳ない事態となりました。
認証された方々にとりまして授与式はけじめであり、またパブリシティの上でも重要な行事ですので、いつまでも先延ばしている訳にも行かず、無理をしたことを反省しております。出席いただきました10事業者(うち2事業者は代理出席)から持続可能な水産業実現への前向きな決意表明がありました。
また、出席がかなわなかった香川県の服部水産様からはメールで決意を頂戴しましたことをご報告いたします。
コロナ自粛で先送りしておりましたMEL審査員研修(CPD=Continuing Professional Development:審査員資格を持っておられる方々の継続的専門能力維持・向上・開発研修)は今月29-30日に開催予定で、審査員の皆様の他コンサルタント企業からも参加の申し込みをいただいています。
今回からMEL協議会が主催する本来の姿での開催となりますが、審査体制の質の充実に手応えを感じています。
なお、新規審査員養成研修で合格され審査員補の資格をお持ちの67名のうち、13名が所定の実地経験を終え審査員に昇格しておられます。新規審査員に昇格された皆様の今後のご活躍を期待します。
3.MEL認証取得のための意見交換会
来年(2021年)1月31日に失効する旧MEL認証につき、新MELへの移行をご案内していますが、特に漁業認証で移行をためらっておられる方がいらっしゃることを心配しています。
この様な中、6月24日に篠島漁協において愛知県しらす・いかなご船びき網連合会及び加工事業者の皆様と意見交換会を開催しました。師崎商工会、県水産局、水産試験場からも参加いただきました。本年2月4日に師崎商工会で新MELへの対応の講習会を開催しましたが、その後関係者間(漁業者と加工事業者、加工事業者間)の意見がまとまらず暗礁に乗り上げ、認証を放棄する流れとなっていました。ところが今回の意見交換会で、認証取得の意味を改めて関係者で話し合った結果、船びき網連合会高塚武史会長の決断により「漁業は新MELに移行するので、それに連動し加工事業者も大手は移行する」と言うことでまとまり、早速に認証機関との移行申請の準備に入りました。
漁業は船びき網連合会の下自主管理が徹底しており、加工事業者も大手はHACCPを取得、製品をCOSTCO様や東海コープ様に納入しておられ、正にエコラベル認証取得が必要なタイミングでした。これからの申請ですが、日本で3例目のしらすの漁業から加工につながる認証となることを期待しています。
なお、師崎商工会の酒井事務局長はじめ関係者の認証継続への強いご支援があったことを感謝の意とともに申し添えます。
4.認証取得者からのご報告
今月は、MEL協議会理事でもある北海道漁連様の菊池副会長にお願いしました。海の豊かさを守るために取り組んで居られる活動のお話しをいただき、MELが世界に向けて訴える日本の豊かな自然と多様性を守る地に足が着いた活動が実践されている姿が浮かび上がりました。
「海の豊かさを守ろう」
北海道漁業協同組合連合会 代表理事副会長 菊池 元宏
「海の豊かさを守ろう」は2015年に国連サミットで採択されたSDGsの17の目標の一つです。海は生産者にとって正しく生活の糧であり、海洋環境を守ることが漁業を持続的に営み、成長産業化する礎となります。
実は北海道の漁協女性部が主体となって昭和63年から「お魚ふやす植樹運動」を手掛けています。今では活動の輪が広がり、漁業・農業・消費者団体が連携し、林業関係者との協働により植樹本数は累計で約120万本となりました。訴えたいことは、森から海へ、そして再び森へ。自然の大きな循環とともに「育てよう北海道の豊かな海と森」「守ろう安全・安心な食の環境」そして、継続すること「100年かけて100年前の自然な浜を」。
こうした中、北海道の秋鮭定置網漁業はH31年3月に漁業認証(ver2)を取得しました。少し遅れて弊会の関連会社がCoC認証を取得しています。
道内の加工業者のなかにもCoC認証を取得する動きが出てきています。
また、秋鮭の加工流通を展望すると、海外での加工拠点にCoC認証を取得させ、コロナ感染症の影響はあるものの、世界的なサプライチェーン構築に取組む必要があると考えています。
さて本年4月にイトーヨーカドーがCoC認証を全店で取得しています。
これを機にMELの認知、普及が進むことを大いに期待しています。北海道の豊かな海のもと、品質・鮮度に注意を払いながら水揚げする、そこに生産者は自信と自負を持っています。ここに秋鮭については「日本発の世界が認める水産エコラベル」の認証を受けている、生産者が持つ自負心というページに書き加えていきます。大漁の旗のもと。
菊池副会長有難うございました。是非北海道の皆様の拘りの結晶である「秋鮭」を漁場から食卓までMELの認証のロゴをつけて繋げたいと願っています。また、北海道漁連と連携しながら、コロナの関係でストップしている中国等の海外での秋鮭加工の委託工場のMEL認証取得についても急ぎます。
5.関係者のコラム
今月は、先のMEL協議会総会で理事を退任されました全漁連の大森専務にお願いしました。大森専務はMEL協議会発足以来、困難な時期にご指導を賜りました。MEL協議会の役員から見た、また全国の漁業者の皆様を代表される全漁連の立場からの水産エコラベルの意義等についてコメントをいただきました。
「MELの更なる飛躍を願って」
全国漁業協同組合連合会 代表理事専務 大森敏弘
新型コロナウイルス感染症の長期化の影響が、わが国の漁業者及びJFグループの生産や漁業経営にも大きな打撃を与えています。
JF全漁連としても、コロナ対策について政府・与党に強く要請を行い、4月の第1次補正予算に続き、6月に第2次補正予算により水産業の経営維持のための諸対策を措置していただいたところです。これら支援事業の活用を図りつつ、当面の厳しい状況を乗り切っていかなければなりません。一方で、コロナ感染症の世界的な拡大を見ると、やはり、コロナ禍を断ち切るための抜本的医療対策の開発が喫緊の課題であると思います。
さて、MEL協議会が国際標準化に向け、一般社団法人として発足した2016年に私は理事に就任しましたが、当時、正会員は大水と全漁連の2団体。まさに手探りからのスタートでした。その後、事務体制の強化、会員数の増加を図りながら、多種多様な魚種を利用するわが国水産業の実態等に対応しつつ、国際的な基準に沿ったアジア初の水産エコラベルとしてGSSIからの承認を受けるに至ったことは、関係各位のご尽力の賜物です。
JF全漁連としては、MELを通じた資源と生態系の保全への積極的かつ継続的な取組が、わが国の水産業が将来にわたり持続的に発展していく礎であるという認識を国内の漁業者、そして消費する国民の皆様と共有していく「相互の気づき」を創出していくことが大きな使命であると考えるところです。
今般、MELの理事を辞することとなりましたが、わが国水産物の国際的な評価の向上に資する世界に誇る水産エコラベルとして、MELの更なる飛躍と発展を関係者の一人として心よりご期待申し上げます。
大森専務誠に有難うございました。大森専務が指摘された「相互の気づき」があってこそ、MELが漁業者の皆様そして社会のお役に立てることを肝に銘じ関係者の協働を進めます。
今月1日からレジ袋が有料になりました。いよいよ、日本も脱プラスチックの時代に入りました。水産業は漁船の船体からロープ、漁網、ブイ、魚函、魚箱等々プラスチックの恩恵を多大に受けています。それだけに脱プラの時代に毅然とした対応が求められます。
コロナのみに惑わされることなく、人類の将来に向けて取り組むべきことにシッカリと目を向けたいと思います。東京発の二次感染が心配されていますが、再び緊急事態宣言等にならない様、ご一緒に自らをマネージし、事業の持続可能性を守りましょう。
皆様のご健勝をお祈りします。
以上