美しい新緑に囲まれて、令和の時代が動き出しました。
日本が10連休で内を向いているうちに、外は油断ならない厳しい動きを見せていまます。多分に政治的意味合いがあるとはいえ、内閣府の景気に関する基調判断も6年2ヶ月ぶりに「悪化」が示されました。保護主義のぶつかり合いが影を落としていることは間違いないでしょう。このところ、日本の食料品の価格は水産物を含め上昇を続けてきましたが、転機を迎えることになるかも知れません。
加えて、気候変動リスク、海洋プラスティック問題等水産業にとって難題が山積です。皆様とご一緒に心を引き締めてことに当たりたいと願っています。
1、GSSI関連
オリパラが近づくとともに多方面から、いつGSSIの承認が得られるかについてのお問い合わせが頻繁になっています。毎月のMELニュースでご報告しております通り、一歩ずつ前進しているとお答えしています。
日本が連休の間に、GSSIの3人の審査員(IE)のMELに関する審査報告書が、最後の厳しいやり取りを経て、全て適合と判断され事務局に提出されました。3人とも相当の覚悟をもって適合の判断を下したと受け止めています。現時点、GSSI事務局のチェック→ベンチマーク委員会メンバーによる読み込み→ベンチマーク委員会での審議(Web会議で開催される。MELとしてまだ把握していませんが5月末開催を期待しています)→パブコメ(4週間)の過程にあります。
GSSI審査員とMEL事務局の間で最後まで議論が続いたことは
- 漁業認証規格:①対象資源と生態系(混獲、投棄、希少種、生息域、食物連鎖等)に対して最良の科学的根拠を用いた予防原則に基づく資源管理の仕組みが、関係者間で形成、共有、実行されていること、②審査報告書が透明かつストーリー性をもって一読で理解できるよう作成されていること(多分に審査員個人の意向であるが・・・)。
- 養殖認証規格:①アニマルウェルフェア(適正な飼育密度等)がきちんと守られていること、②疫病の診断と処置がOIE基準に準拠し専門家の助言に基づき行われること、③餌として丸の魚の直接的な投与および同種同属の原料の使用禁止。
- ガバナンスと管理:①審査はMELの新規格に基づく管理運営全般について行われ、MEL協議会の体制についても適合の判断において新規格の策定手順や管理運営体制に加え、実施の一貫性およびレビューによる改善姿勢も含まれたこと、②スキームオーナーとして、認証審査の透明性を含め、基準の確実な実施を行うこと。
3人の審査員が最終的にこれで適合と判断したポイントは、提示した規格の詳細もさることながら、MELからの申請は新規格に則ったものであり、MEL協議会のスキームオーナーとしての決意と3人の審査員が訪れた現場の皆様の水産エコラベルに前向きに取組もうとする熱意にあったと受け止めています。勿論、3人とも旧規格については一切踏み込んでおらず、また議論もされていないということです。MEL協議会としては、次の様に整理しています。
- 新MELスタートに当たって旧認証を取得された皆様を継承していることと新規格が発効するまでの間の旧認証の取得者を加え漁業認証(Ver.1.0)50件、流通加工認証(Ver.1.0)48件が生きて活動している。
- 旧規格から新規格への移行期間の定め(新認証発効後3年間と規定している、具体的には漁業および流通加工について2021年1月31日)の通り移行していただくこと。無論、移行審査で認証が取り消しとなるケースも想定されます。
- 新規格への移行が行われないと「日本発の、世界に認められた水産エコラベル」が皆様のお役に立てないことになってしまう。この点については機会をとらえご説明をさせていただくとともに、対応のための体制構築を急ぎます。
2.認証の状況
新規格での認証は5月末までに、漁業2件、養殖3件、流通加工6件の計11件となる見込みです。現在、審査中が漁業2件、養殖5件、流通加工5件あります。日水資による認証申請受理済み9件、更に認証申請に向けてコンサル中14件、事前相談中が7件と、かなり集中しており、審査や認証が遅れ気味でご迷惑をおかけしています。
3月に実施しました新規審査員養成講座の合格者35名は、現在はまだ審査員補の資格であり、各人オブザーバーとしての見学1件を含め合計3件の認証審査実施を計画的に進めており(MELの認証機関に対する要求事項の基づき、審査員補は指定審査員の下で、2件以上の初回審査または更新審査を実施した実績を経た上で審査員となれる)、審査員として独り立ちいただくことを急いでおります。
認証機関複数化の問題は、既に機関決定されている海生研(公益財団法人 海洋生物環境研究所)との間で正式な契約書を近々締結する予定です。
他に、外資系の機関とも情報交換を行っています。
この様な活況とも言える中で新しい動きも出ており、ご参考として例示しますと
- クロマグロの完全養殖の認証申請が当協議会会員である金子産業様から初めて出されました。人工種苗と人工飼料による事業構築と養殖認証取得への挑戦です。厳しい採算にも拘わらず前向きな取組に敬意を表します。
- 当協議会会員であるCGCジャパン様の魚介類PBの「自然のあしあと」“ひろびろいけす育ちぶり”を生産しておられる(株)兵殖様によるMEL養殖認証取得(現在審査終了の段階)と共に、CGCジャパン様および生鮮センターがCoC認証を取得し(コンサル受付済みの段階)、MEL認証品のサプライチェーンを完成させる取組が進んでいます。このプロジェクトが成功すると、他の魚種への展開が可能になると期待しています。小売業の皆様の水産エコラベルの普及への関心が高まるキッカケになればうれしい限りであり、MEL協議会としても積極的にお手伝いをさせていただきます。
3.イベント関連
今月は須藤管理部長が、中国水産流通加工協会(CPPMA)が「Global Aquaculture Summit 2019」に合わせ特別に設けた「FAO Sustainable Fisheries Standard Seminar」に、FAOの推薦によりホスト国から招請され参加し、セミナーにおいてMELの活動状況を発表させていただきました。
(Global Aquacuture Summit 2019)
昨年7月にローマで開催されたCOFI(FAO漁業委員会)のサイドイベントでのMELのプレゼンテーションに始まり、本年3月のボストンのSeafood EXPOにおけるMELのワークショップ開催に続く3回目の海外でのプレゼンテーションです
須藤部長の報告によりますと、発表は好評で参加者に様々なインパクトを与えた様です。FAOからも評価いただくとともに、ホスト国の中国の皆様からも強い興味が示されました。MELが、ローカルな産業の実態に寄り添いつつ、かつグローバルな基準を満たす仕組みとして、日本の水産業と食文化を守りながらSDGsの目標実現にも貢献したいという姿勢が共感を呼んだ様です。
MELニュース本年1月号でご報告しましたが、GAP総合研究所がサポートする東京銀座のGAP認証食材のアンテナショップ(レストラン)「グランイート銀座」にMEL認証水産物を提供するお話をいただき、前向きに取り組んでいます
本年3月にオープンしており、イベントとして各県の特産物を週変わりで提供を始めています。MEL認証の水産物もその一つとして参加することが可能です。詳細はこれから詰めることになりますが、グランイート側から提示されているアイデアは、契約料をMEL側が負担した上で、食材は10種類以上をグランイート側の発注でMEL側が納入、勿論メニューはグランイート側で開発し、納入された食材代金はグランイート側が負担する。
食材の数から見て、MEL認証者が何社かで組んで企画に応募する方向で組み立てて見たいと考えています。ご興味のある方は事務局にご連絡下さい。
(GAP総合研究所のHPより)
4.会員募集について
GSSI承認に一歩ずつ近づいておりますので、会員の募集を再開したいと考えております。GSSIの承認が得られたとしても、MELの財務基盤は著しく脆弱であります。世界に認められ、かつ事業者の負担をできる限り軽くするためには、会員の皆様による一段のお力添えは不可欠です。SCR、ESG、SDGsが日本でも定着する中、是非「日本発の世界に認められるMEL」が財務的にも独り立ち出来、持続的に活動できる様ご理解とご支援をお願い申し上げます。
築地から難産の末移転をした豊洲の取扱量の減少が公式に発表されました。初セリの3億円超のマグロ等話題に事欠かない豊洲であり、設備は最新鋭でしかも場内の飲食は大盛況であっても、主要魚種の不漁もあり取扱量は厳しい数字となりました。家庭内で調理する魚が減少していることとつながっていると考えると、改めてライフスタイルの変化や流通の変化とどう向かい合うか?変化に対応する側ではなく、変化を起こす側に回らなければと感じています。日本中、皆が同じ様に減少しているわけではないとすれば、自らの意識を変える行動が求められることになります。
水産物の輸出は避けて通れません。MEL認証取得を考えておられ皆様の多くは、輸出に於ける活用を強く意識しておられます。輸出を持続的に続けるためには意識の変革が不可欠です。農林水産物の輸出促進は国策であり、この政策に沿ってこれからもMELが活動の充実を通し、日本の水産業に従事される事業者の皆様と社会のお役にたてることを念じて日々精進します。
以上