多事多端であった本年も残り僅かとなりました。
皆様には大締めに向けご多用のことと拝察申し上げます。
MELも何とか難関を乗り切り、GSSIから承認され、13日には第2回のワークショップを開催し経過を皆様にご報告しました。
次の焦点は、承認をしっかり維持しながら、ワークショップで皆様から頂きましたご指摘、ご意見を反映させ、どの様に社会と事業者のお役に立てるかに向かって行動することになります。
1.GSSI承認関連
GSSI承認は12月12日に理事会(Steering Board)で決定されました。
GSSIのWeb上にMEL承認のニュースは12日(現地時間)に次の通り公開されました。
日本では13日朝に江藤 拓農林水産大臣より定例記者会見で発表いただきました。MELは、MELニュース号外で皆様にご報告するとともに、ホームページに13日付でアップロードしました。
2017年2月に国際承認取得のためのプレアセスメント開始から2年10ヶ月、承認申請書提出から1年2ヶ月かかりました。期間もさることながら、業務量も膨大で、関係いただいた皆様の真摯な努力の積み重ねなくしては実現しなかった承認であり、皆様に深甚なる敬意を表するとともに心からお礼を申し上げます。この間ご指導とご支援をいただきました政治、行政、アカデミアの皆様に深謝申し上げます。
しかし、GSSI承認はMELが日本の社会に定着する第一歩にすぎません。「今日が始まり」の精神を忘れずに、関係者の皆様とともに緊張感をもって、心を一つにあわせ、国際基準のスキームに相応しい運営と行動をしてまいりたいと思います。
GSSIの理事会からはいろいろな注文がついており、これから様々な課題を一つ一つ解決しなければなりません。繰り返しご説明してきました通り、MELのGSSIへの申請は新MEL(漁業、流通加工は2018年2月1日発効のVer.2.0、養殖は3月9日発効のVer.1.0)で行っており、旧MELは今回のGSSI承認の対象となっていません。ただし、漁業と流通加工は旧から新への移行期間を発効後3年以内と定めていますので、2021年1月31日までであります。その間、旧MELと新MELが同じロゴを使用しマーケットが混乱することを避けるため、旧MELにはV1を、新MELにはV2を表示することで最終的に決着しました。このことがGSSIのWeb上の開示においてMELロゴマークにV2が表示されている理由です。なお、新MELのみの養殖認証にもV2表示が求められています。
現在使用していただいているロゴへのV1あるいはV2表示を、具体的に何時までに変更しなければならないかGSSI事務局と打合せています。GSSIの理事会の了承を取り付ける必要があり、交渉にもう少し時間を要するかと思います。認証取得者にはご負担を強いることになり心苦しい限りですが、信頼されるMEL確立への第一歩であり、ご理解を賜る様お願い申し上げます。
2.認証審査の状況
新MELの認証件数は、漁業2件、養殖12件、流通加工12件、計26件で越年することになりました。申請中の皆様には、何時承認されるのかの問い合わせをいただいておりますが、日水資様、審査員の皆様とともに、認証の遅滞を取り戻すことに全力を尽くしていますので、今しばらくの辛抱をお願いします。
旧認証の皆様の更新審査の期限が次々到来して居り、12月に6件、3月に5件発生します。すでに新MELへの移行を申請している事業者もおられますが、皆様とのやり取りからMELにとって心配することは、期限内に新MELへの移行の申請をして頂かないと、認証が終了するということにご理解がないことです。旧認証での更新は行うことは出来ませんので、新認証に移行いただくか、または認証を失効させるかのどちらかを選んでいただくことになります。新年度も引き続き、コンサルティングと認証取得のための講習会は継続されますので、この様な場をとらえご説明し周知を図ってまいります。ご相談は、遠慮なくMEL事務局または日水資様にお寄せください。また、ご要請があれば、皆様のところまで赴き意見交換をさせていただくことも検討いたします。
3.MELワークショップ開催について
12月13日に第2回MELワークショップを赤坂インターシティコンファレンスで開催しました。おかげさまで関係者を含め230名を超える皆様にご参加頂く盛会となりました。参加者の属性は、アンケートの集計では生産者15%、製造業者18%、流通業者22%と事業者が55%を占め、次いで学術研究関係者18%であり、テーマに沿う構成であったと受け止めています。
冒頭に伊東 良孝農林水産副大臣から暖かい祝辞をいただくとともに、水産庁から山口 英彰長官はじめ幹部の皆様にご出席・登壇いただき、文字通り官民を挙げての催しとなりました。
伊東良孝農林水産副大臣の祝辞
今回は、GSSIに承認されたスキームとして、事業者、消費者、社会のお役に立つことを通し世界で輝く日本の水産物を目指すことをテーマにして、より進化した水産エコラベルのあり方を議論する場を目指しました。
第一部は科学者、スキームオーナーの視点から
第二部は生産者、マーケット、消費者の視点から
第三部は総合討論
第三部 総合討論における会場からの発言
特に、第三部の総合討論に最も時間を割き、会場の皆様と登壇者の本音の発言との間のやり取りを通してお互いに学び合う一助になることを期しましたが、参加者を巻き込むもう一工夫が必要であったと感じています。
ワークショップ全体の座長をお願いしました横浜国立大学松田 裕之教授の座長コメントをMELホームページに掲載しておりますのでお目通し頂ければ幸甚です。
約半年をかけて準備した企画であり、ご支援をいただきました多くの皆様に深甚なる感謝の意を表します。来年は更なる進化したワークショップとしていく所存です。
4.その他
12月6日に開催されました日本海洋政策学会の第11回年次大会に、副会長を勤められる寺島紘士先生のご案内で出席しました。言わずもがな、海洋政策の中の水産であり、事業者に取って軽視できない集まりであることを改めて感じました。
MELがご指導いただいている松田裕之先生、牧野光琢先生も登壇されました。また、学生小論文が表彰されましたが、その中に、東京海洋大学大学院の折田清隆氏による「MSC認証とMEL認証の比較に基づく水産エコラベル政策への提言」があり、大学院生がこの問題に興味を持つ時代になりつつあることを感じました。
また、12月19日に(一社)全国近海かつお・まぐろ漁業協会による「近海かつお漁業問題研究会」においてMELの現状の説明をさせていただく機会を頂戴しました。「近海かつお漁業問題研究会」は全国協会及び各県の協会トップから漁労長、通信長が一堂に集り、水産庁国際課かつお・まぐろ漁業室、開発調査センター、漁業情報センター等からも出席され、真剣に現状に向かい合い、学び、情報を共有しそれをもとに議論する会であることに感銘しました。
全国近海かつお・まぐろ漁業協会は、2010年12月に近海かつお一本釣り漁業でMEL漁業認証(Ver.1.0)を取得し、2015年に更新し現在に至っていますが、漁業者としてMEL取得の効果は無かった認識をしているとのご意見でした。
操業船が過去10年間で69隻から43隻に減少する中、ここへ来て一部の事業者がMSC認証取得に動いておられ、新MELが国際承認されたこともあり、協会としてどう対応するかが課題となっています。
これから協会が皆様に意見を聞きながら検討することになりますが、現状は漁業者のみが認証を取得しており、生鮮流通するかつおの販売において、サプライチェーン全体で取り組む仕組みとなっていない欠点を持っています。
ただでさえアニサキス問題で疲弊しておられる漁業者にMELがどの様にお手伝いできるか事務局と打ち合わせながら研究します。
今年もMELニュースにお付き合いいただき誠に有難うございました。
イギリスのエリザベス女王の今年のクリスマスメッセージはEU離脱問題で分断する国内に向けての「調和と和解」が核心でありました。「道のりはいつもスムーズではないが、小さなステップが大きな変化につながる」との訴えがMELにとって共感出来ました。
出来る限り現場に密着した最新の情報をお届けし、生産者から消費者までのネットワークを通して、様々なステップを踏みながら水産エコラベルが日本の社会にしっかりと根を下ろし、SDGsの目標実現に貢献できる様皆様とともに行動したいと願っております。引き続きよろしくお願いします。
インフルエンザも本格的流行期に入っております。皆様には、健康管理に気を付けられ、どうか良い年をお迎えください。
以上