MELニュース2019年 10月 第19号

繰り返し報道される台風15 号の爪痕のブルーシートがとれぬまま、今月も観測史上最大級の雨を伴った19 号により広範囲が厳しい追い打ちをかけられました。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
行動がコミット出来ない「国連の気候行動サミット」の報道を見ながら、海水温上昇→台風の発達がもたらす自然の猛威に頭を抱えるばかりです。
秋の魚も、高い海水温に邪魔されてか相変わらずの不漁で、豊洲市場でのサンマのセリ値が鯛を上回ったという話題が面白おかしく語られています。豊漁のイワシも型が小さくなかなか良い兆しが見えて来ない中、ご関係の皆様のご心労を思うにお慰めの言葉もありません。この様な歴史的とも言える様々な現実に立ち向かっておられる皆様のご健闘をお祈りします。
お待たせしておりますGSSI の承認は、遅れに遅れようやく最終決定を行う理事会までもう一息のところにあります。まさかはないと信じております。

1.GSSI 承認関係

承認を目前にして、GSSI 事務局からは最後まであの資料、この資料を出せと追加の要求があり、資料を出しても出してもスッキリ前に進まない足踏み状況が続いております。
既に、昨年9 月25 日に承認の申請書を提出してから1 年1 ヶ月を経過して
おります。イライラが募ることと思いますが、もうしばらくの我慢をお願いします。特に、7 月に実施されたパブコメには各方面から合計100 項目を上回る意見が寄せられ、日本の資源管理、漁業の実態に対する疑問や審査の透明性、信頼性が厳しく指摘されました。MEL が自らの存在意義のコアとして、日本の自然、産業、食文化の多様性を前面に出したが故の生みの苦しみであったのかもしれません。
アジア発のスキームとして初めての承認申請ということだけではなく、水産エコラベルが世界から、社会から厳しく監視されている実態が浮かび上がりました。つまり「やった振りは絶対に許されない」ということです。
待たされている時間が長いだけに、応援のメッセージも多数いただいており、関係者とともに「日本発世界が認める水産エコラベル」に恥じない活動をすることで、ご支援頂いている皆様のご期待に応えたいと念じています。

2.認証審査に関して

認証審査は相変わらず渋滞しており、ご迷惑をおかけしております。
10 月7 日に黒瀬水産様(ブリ養殖およびCoC)、小豆屋水産様(ブリ養殖)、平安海産様(CoC)、の3 社4 件が発効し、新MEL 認証は、漁業2 件、養殖11 件、CoC10 件の合計23 件になり、既に昨年に認証された2 件の年次審査も始まっています。
10 月16 日に、7 月に発効しておりました鳥羽磯部漁協和具浦支所様のワカ
メ養殖とCoC を含め、3 社・団体への認証証書授与式が行われました。
鳥羽磯部漁協和具浦支所様のワカメ養殖はMEL として初めての海藻養殖の認証であり、地元はもとより、日本の海藻養殖に水産エコラベル認証時代に向けて大いなる刺激を与えました。和具浦支所の現場で推進されました皆様の努力に敬意を表します。また、認証証書授与式で鳥羽磯部漁協の永富組合長のスピーチの中の言葉「私たちが、腹八分目で事業運営をすることが持続可能の基と信じてやって来たことが今日につながった」が心に響きました。
製品は、「答志島和具浦産エコワカメ」としてブランド化され、流通ならびに消費者の皆様からの支持の手応えも充分と承っており嬉しい限りです。

(10月16日開催の認証証書授与式)
向って右から日水資高橋会長、和具浦支所橋本運営委員長、鳥羽磯部漁組永富組合長、小豆屋水産山下社長、平安海産矢田工場長,MEL垣添

現在、MEL認証取得に向けてコンサル中から認証発効待ち迄約60件が
あり、この渋滞解決について、年次審査、新MELへの移行審査、更新審査をどの様に進めるかを日水資様と打ち合わせを重ねております。
GSSIからの様々な指摘も取り入れ、年次審査、移行審査、更新審査に関する認証取得者との連絡は、ロゴ使用を含め皆様との関係を密にするためMELが担当し、実際の審査に関することは日水資様が行い、双方のデータを共有しながら、渋滞の解消と発生防止に取り組んで参ります。
また、2021年1月31日をもって旧MELから新MELへの移行期間が終了することに伴い、全ての旧MELは失効し、旧MELロゴマークの表示も終了となります。この点を充分に留意いただき、今から1年先の2020年10月31日(移行期間が終了する3か月前)までには、新MEL認証への移行に向け少なくとも認証審査を終えられる様お願いしたいと考えています。終了間際での申請集中による混乱が起きない様、かつ認証が遅れたことによる空白期間等の不具合を起こさないため、ぜひ早めのご準備をお願いします。
来年10月31日までに更新期限が到来する事業者の皆様は、更新期限前に新MELに移行するかどうかを決め、更新審査の手続をして頂く必要があります。以上は、11月に開催予定の理事会にお諮りした上ご連絡申し上げますが、MELの国際標準化における審査の透明性確保の一環として、状況ご賢察の上ご賛同をお願い申し上げます。

3.講習会、意見交換会

本年度の残りの講習会は、長崎、三重、大阪を準備中です。それ以外に、対象を絞り込んだ意見交換会の開催を考えております。
10月23日に、広島でカキ養殖の皆様との意見交換会を開催しました。
広島県、県漁連、地御前漁協の幹部の皆様と「水産エコラベルは牡蠣養殖事業者の役に立つか?」をテーマに、水産エコラベルの現状説明と取得にあたってのコンサルティングの進め方および意見交換をしました。牡蠣養殖業界は既に宮城県、岡山県にASC、MSC認証取得事業者がおられることもあり、組合幹部の皆様は既にエコラベルに関する勉強をされていました。それでも「エコラベル時代の世の中の姿と、自分たちの事業にどの様にかかわるかが見えてきた」というのが皆様に感想でした。出来れば組合員全員で取り組みたいので、じっくり時間をかけて議論をしたいという前向きな方向付けがされました。
ただ、今回は広島県全体の取り組みではなく地御前漁協だけが対象であり、関係者の広い合意を得るにはまだまだ我慢が要ることを感じました。
日本は中国、韓国、アメリカに次いで世界第4位のカキの生産国です。日本の高品質のカキの市場として、インバウンド需要への対応だけでなく世界を標的に考えるなら、積極的な市場開拓への意識の転換が求められます。行政、研究者、事業者間の一歩踏み込んだ協働を期待します。
前へ進むキッカケを作っていただいた広島県、広島漁連の皆様に深謝申し上げます。引き続き、丁寧にやってゆきます。

(意見交換会)

(地御前沖のカキ筏と収獲風景)

4.イベント関連

今月のイベントは、MEL課題である消費者の認知度向上を意識した2つの催しに参加する準備をしています。
1つ目は、MELの会員であり、規格委員会とアドバイザリーボードに委員を出して下さっている主婦連様が参加される「くらしフェスタ東京2019」の「主婦連交流フェスタ」に出展します。10月26日(土)に新宿駅西口広場で開催されます。
もう一つは10月26(土)~27日(日)に横浜港赤レンガ倉庫広場で開催される
東京湾再生官民連携フォーラムが主催する「東京湾大感謝祭」に出展します。
今年はMELの漁業認証を取得しておられる海光物産様(千葉県船橋港を基地に東京湾内でまき網漁業によりスズキやコノシロ等を漁獲、「瞬〆」処理を行い差別化商品として販売)にご協力いただけることになりました。併せて物販の許可もいただきましたので、試食だけからもう一歩踏み出します。

 

今秋最大の行事である「即位礼正殿の儀」が厳かに執り行われました。世界に向かって天皇陛下が即位を宣言される儀式は生憎の雨となりましたが、日本の精神文化の奥の深さを世界に発信出来たと確信します。
他方で、台風19号の洪水で自宅から避難が間に合わず体が不自由なご主人が亡くなった老夫婦の悲話に思わず涙し、まだ避難所生活を強いられてあるいは停電、断水を耐え忍んでおられる方々を考えると実にやり切れない気持ちです。
でも、とても爽やかなこともありました。今回、認証授与式に出席された鳥羽磯部漁協和具浦支所関係の皆様は、5名の「結(ゆい)」の会(ボランティアでワカメの収穫をお手伝いしている都市の高齢者の方々)のメンバーを入れ実に12名でした。たまたま、和具浦を訪れた観光客の声、「これからはエコラベルが無いとお店で取り扱ってもらえない時代が来ますよ」に素直に耳を傾け、真剣な議論を経て、認証取得に必要な基準の遵守と要求される詳細な記録保持を面倒がらずにやろう。それが、自然に恵まれた和具浦の海を生かす道だと考え前に進んで来られた12名の皆様の表情は実に晴れ晴れと輝いていました。小さなコミュニティー発の日本の多様性を生かした水産エコラベルのモデルケースとして、今後もしっかりと歩んでいただきたいと願っています。本当におめでとうございました。
既にご案内しております通り、第2回のMELワークショップを、12月13日(金)に東京赤坂インターシティコンファレンスで「世界で輝く日本の水産物を
目指して」をテーマに開催します。今回はゆったり目の会場を準備しましたので
関係の皆様の多数のご参加をお待ちしています。

以上